第19話 雷帝ドナースタッグ
「ほう、俺様の雷撃を正面から受け止めるとは…最近はこれほどの水魔法の使い手は見たことがないな…」
「それはどうも、だがこっちとしては水遊び程度の力しか出してないんだがな」
「面白い、ならこれはどうだ!」
ズドーン、ズドーン、ズドーン
雷撃3連発が放たれる。
「トータルインバリッド(絶対無効)!!」
先程よりも巨大な水壁が現れ、俺たちとドナースタッグの間に出現する。
雷撃は水壁にぶつかると威力を失い消え失せる。
「シンすごいわね⁉︎いつの間にここまで強くなったの?」
「いや、清掃員の頃からこれくらいは余裕だったが、まさか戦闘でも以外と使えるもんだな!」
「こんなすごい才能を持ちながらシンは何で清掃員やってたんでしょうね」
「掃除には掃除の楽しさがあったんだよっ!!」
エーミールさんだけは会話どころかドナースタッグを見てあわあわしている。
まあ、これが普通の反応だよな…
「さて次はこっちの番だぜ!いくぞクライネ!」
「もちろんですよ!」
「「アイシクルハイフロー!」」
俺が放った高流量の水が瞬時に氷に姿を変えてドナースタッグに遅いかかる。
次の瞬間、ドナースタッグは通常ではあり得ない速度で次々と氷を回避する。
「そんな私の氷が当たらない⁉︎」
「残念だったな!俺は雷の使い手だぜ!これくらいの移動速度はちょろいもんよ」
なるほど…自身の移動にも雷を付与することであの速度で動くことができているのか。
「これでは俺様の攻撃もお前達の攻撃も当たらずらちがあかんな…ならば!」
グォォォォォォォォォォォォォォォォォーー!!
ドナースタッグは天に向かって雄叫びをあげる。
すると、空の雨雲はより一層分厚さを増し、大粒の雨が降り始め、嵐のごとく風は吹き荒れ、雲を動く雷の音は耳をつんざくほど騒がしくなった。
「貴様の水壁がどれほどのものかは知らんが、俺様の最強の雷撃であるデッドエンドサンダーボルトで一撃で仕留めてやる!!」
「ちょっとシン!なにあのデッドなんとかってやつは⁉︎かなりマズくないかしら!なんとかしてよ!」
「私の氷魔法も当たれば十分ダメージは与えられそうですが、あの速度で動く敵に当てるのは難しいです」
「はっはっはっ!俺様のこの技の威力は最強だが攻撃までに時間がかかるのが欠点でな…
だがお前達の攻撃が俺様に当たらないとなると時間を稼ぐのは余裕ってことだ!あと、30秒もすればお間達は跡形もなく消え去るっ!!」
嵐はより一層激しさを増し雨風が吹き荒れて立っておくのですら難しい。
雷鳴はさらにけたましく、雷光は目を眩ませるほど輝きを放っている。
「ねえシン、このままじゃ私たち本当に死んじゃうわよ!」
「なんだティア!うるさくて全然聞こえないぞ!」
必死に叫んでいるようだが途切れ途切れにしか聞こえてこない。
さて…どうやってあいつに攻撃を当てるかだが…
よし、これで行くか。
暴風雨に負けじとクライネの元に向かう。
「おいクライネ!聞こえるか?」
「はい⁉︎聞こえません!!」
再度クライネの耳に極限まで口を近づけて叫ぶ。
「ちょっとシン、近いですって!」
なぜか顔を赤らめながらこちらに叫び返してくる。
「クライネ!まじめにやるんだ!いいか…ゴニョゴニョゴニョ」
「わ、わかりました!わかりましたからっ!」
全くこんな時でも緊張感のないやつだ。
「何を話しても無駄だぞ!あと数秒でこの辺り一面は焼け野原と化すだろう!」
ドナースタッグは攻撃の準備に入る。
今だっ!
お互いにコクリとタイミングを合わせる魔法を発動する。
「レーゲンヘイル(氷の雨)」
「トータルインバリッド(絶対無効)」
吹き荒れる雨粒の全てが巨大な氷のツララとなり地面に降り注ぐ。
それと同時に俺は水壁を作り仲間を全員覆い尽くす。
「な、な、なんだとーー!!」
ザザザザザザサザザザザザザザザザザザザ
ドナースタッグは攻撃を中断して凄まじい速さで移動するが、これほどの氷の攻撃を全て避け切るのは不可能であり、瞬く間に氷のツララに身体中を貫かれる。
「グワァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
雄叫びをあげた後、ドナースタッグは力が抜けたようにだらんとなる。それと同時に頭上の雨雲も徐々に消えていく。
「自身のおこした嵐のせいでやられるとは皮肉なものだな…」
「シンすごいわ⁉︎どうやって倒したの?」
ティアがキラキラした目でこちらに近寄ってくる。
「クライネの氷魔法で降り注ぐ雨を全て氷に変えたのさ!」
「流石にあれほど広範囲の攻撃はドナースタッグの速度でもかわしきれませんでしたね」
「でもそんな広範囲な技なのに、なんで私達は巻き込まれてないの?」
「それは俺の水壁で防御してたからさ!」
「やっぱりシンはやるときはやる男ね!まさにヤル男ね!」
「おい待て!へんなあだ名をつけるんじゃねーよ!誤解を生むだろ!」
「そういえばエーミールさんは無事ですか?」
クライネの質問にハッとさせられ、エーミールさんの方を見ると完全に気絶していた。
「まあ…大丈夫だろ!さっさと帰ろうぜ!」
エーミールさんを背負って歩き出す。
消えゆく雲の間から地面に太陽の光が差し込んでくる。
光は俺達の帰る道を明るく照らしていた。
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