第17話 エーミール探し

「森が見えてきましたよ」


「着いたのはいいけど、もうくたくたよ」


「おいティア!ここからが本番なんだぞ!」


森に近づくにつれて雨雲が増えて天候はどんどん悪くなっていった。


「まだ昼前だって言うのにずいぶんと暗いな」


「まあ、雨が降ってないだけマシでしょ!」


「でもこの天気ということは魔王軍の幹部も近くにいるということでしょうか?」


「いや、それについてはよく分からんな…噂では、そいつに近づくと雨雲というより雷が鳴るらしいが…」


「シンは掃除しかしてなこなかったくせに結構鋭い考察ね!」


「"掃除しか"は余計だろ!!」


森の入り口に到着してそのまま中へ進んでいくと、森の木々が空を遮断して、より一層辺りは暗くなる。


「さてと、どこにエーミールさんはいるのやら…」


「ねえシン、かなり怖いんですけど…」


「前に来た時にはもっと天気もよくて明るくかった気がしたがこんなに暗いのは初めてかもしれないな…」


「そうですね。だとしたらこれがシンと暗闇の初体験ってことになりますね!」


「おいクライネ⁉︎誤解を招くような表現はやめろっ!」


森の道をしばらく進んでいくと以前に巨大ムカデと戦った大きな岩がある場所に辿り着く。


「なつかしいな、久しぶりに来ると随分と昔のことのように感じるな」


「私はこんな場所は二度とごめんよ!」


「ここでシンと初めて合体技を繰り出しましたね…」


「んーと…クライネ、言いたいことは分かるんだが少し言葉を選ばないといろいろと誤解を生むから気をつけようぜ!」


言ったもののクライネはきょとんとした表情でこちらを見てくる。


「まあここはこれくらいにして、早いところエーミールさんを探そうぜ!」


その後しばらく辺りを探したが結局見つけることはできなかった。


「そろそろ日が沈むな…日中でもかなり暗かったが夜になるとさらに闇は濃くなるだろう。今日はどこかで野宿して明日も探すとしようか!」


「シン、その言葉を待ってたわ。出来るだけ安全なことろで泊まりましょう!見張りがいてディナーが出てきて…」


「ですよねティア!室内掃除してくれて朝食が出てきて…」


「お前たちはこんな森の中にどんな宿泊場所を求めてるんだよ!普通に洞窟でも探して中でテント張るぞ!」


ごねる2人を引き連れて周囲を歩きまわる。


「おっ!あの洞窟なんてちょうど良さそうしゃないか?」


見つけた洞窟の入り口は広く、中は真っ暗で何も見えない。


「中に何かいそうじゃない?」


「そうは言っても、他に良いところがないんだからしょうがないだろ!ほら1人ずつタイマツを持って入るぞ」


「これってあの店で買ったやつ⁉︎お金がないのに、なんでシンだけしっかり買い物してるのよ⁉︎」


「いやいや⁉︎これは必要経費だろうが!」


それぞれのタイマツに火を付けて洞窟の中に入る。


「入り口も広かったが、入ってみると中もかなり広いな!」


「ねぇ、あそこ何かいない?」


「どこですか?」


ティアは前方の方を指差しているが目を凝らしてもよく分からない。


「もう少し進んでみるか」


「ちょっとシンだけ行ってきてよ!私たちはここで待ってるから!」


「ふざけんな!一緒にいくぞ!」


強引にティアの手を引っ張りズンズン進んでいくと少しずつティアが指差したものの輪郭が見えてくる。


「あの…冒険者さんですか…?」


不意に向こうから声が聞こえてきた。


「「きゃー⁉︎」」


ティアはビックリしたのか俺の腕にしがみついてくる。


ティアにつられて、クライネまで反対の腕にしがみついてくる。


「落ち着け2人とも!向こうにいるのは人間だ!」


「驚かせてしまい申し訳ありません…」


しがみつかれて身動きが取れないため、向こうからこちらに歩み寄ってきた。


男は元気のない様子で服は少し汚れが見立っている。


少なくとも何日か風呂には入ってない感じがする。


「いえいえ、大丈夫ですよ。ところで人違いだとあれなんですが…あなたはエーミールさんですか?」


「えっ⁉︎…そうですが、どうして私の名前を⁉︎」


よっしゃー!!


捜索に何日かかるつもりでいたが嬉しい誤算だ。


エーミールさんも見つけたし、あとは無事に帰るだけだな…


魔王軍幹部に会わないように…

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