第16話 その頃マイン城では③
あれから我が兵団はなんの成果もあげれてない状態が続いている。
「失礼します」
王室へ入ってきた団長は以前よりも痩せこけている。
「ずいぶんと痩せたように見えるがどうかしたのか?」
「いえ、このところあちこち捜索をして魔王軍の足取りを掴もうとしておりますが、なかなかうまくいっておらず…」
「戦力は上がっても倒すべき相手がいなければ意味がないということか…」
団長からは以前のような自信に満ちた表情は消え失せており、会話中もどこか伏し目がちだ。
「うむ…どうしたものか」
ダッダッダッ
「王様!失礼します!」
使いの1人が慌てた様子で部屋に入ってきた。
「いったいどうした⁉︎」
「はい、実は魔王軍の幹部らしき情報を手に入れました!」
使いはまだ息を切らしてハアハアしている。
「なんだと!それは詳しく教えてくれ!」
団長も気になったのだろう、私よりも興味津々といった様子で使いの方を見ている。
「はい、メチャキタナという街から近い森にて魔王軍幹部がいるのでは?との状態が入ってきております」
「メチャキタナといえば…シンが生活している街か。クエスト依頼は出されておるのか?」
「はい、メチャキタナのギルドにて張り出しはしているそうですが…」
「うむ、あんな所に張り出しても誰もやらないだろうな!」
「王様!ここは我が兵団に任せてはいただけないでしょうか?」
ふと気づくと、団長の顔は水を得た魚のごとくいきいきとした表情に戻っている。
「なるほど魔王軍の足取りを掴んだ今なら戦果をあげる絶好のチャンスだな!」
「しかしここからだと向こうに着くまではかなり時間がかかると思うが大丈夫か?」
「問題ありません!すぐにでも兵を集めて出発いたします!」
「よし分かった!期待しておるぞ!」
入室した時とは違い堂々とした姿で団長は王室を後にした。
「では出発の準備が整い次第知らせに来てくれ!」
「かしこまりました」
先程の使いも団長を追って王室を後にする。
もし幹部を討ち取ったとなると増兵した意味を見出せるというものだ。
しばらくした後に使いの1人が再び王室へやってくる。
「失礼します。兵団の準備が整ったようですのでお見送りをお願いいたします!」
「よしわかった、では外に行くとするか」
使いの1人と共に門へと向かう。
城内は大変広いもので、王室から門まで行くのにも一苦労だ。
さらに最近は城の掃除が行き届いておらず、あちこち汚れも目立っている。
「城の掃除はあれから改善されているのか?」
「申し訳ありません。そちらに関しましては団長に一任しておりますが、この状況を見ると改善はされてないかと…」
「まあよいだろう。今回の件で戦果をあげるまでは我慢するとしよう…」
門へたどり着くと団長が兵団を連れて隊列を組んでいる。
兵士の数はぱっと見た感じでは数え切れないほどだ。
やはり増兵しただけのことはあり圧巻のスケールだ。
「王様、これから魔王軍討伐に向けて行って参ります!」
「よし、期待しておるぞ!」
兵団一行は団長を先頭に馬を携えて出発して行った。
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