第15話 いざ出発

道行く人に変な目で見られながらもなんとか家に帰ってこられた。


「結局ティアの回復がどれほどなのか分からなかったが、そこは実戦で試すとするか…」


「私、実践でも泣かされちゃうの⁉︎」


ティアは帰ったころにはすっかり泣き止んでいた。


「いや、毎回泣かすのは大変だから涙を溜めておいて薬草のように適宜使用するのがよくないか?」


「確かにそうね!それなら毎回泣かずにすみそうね!」


途端にティアの表情がパッと明るくなった。


「さすがシン。たまには良いこと言いますね!」


「たまにじゃねーよ!いつもだろ!」


とにもかくにもこれで全員がスキルを使用できるようになったことだし…


「今日はゆっくりして明日の朝、準備ができたら出発とするか」


今日は各々準備を済ませて、明日の冒険に備えることにした。





翌日の朝も天気は清々しい快晴だ。


「よし、みんな準備はできたか?」


「ティアがもう少しだと思いますよ」


そういえば早朝からティアはトイレにこもって出てきてないな。


ガチャッ


「みんなお待たせ!」


ティアは両瞼がパンパンに腫れた状態でトイレから液体の入ったビンを持って出できた。


「おいおいどうしたんだその顔は⁉︎」


「とりあえず泣きまくってきたわ!このビンに入ってるのは全部私の涙よ!」


そう言って持ち上げたビンにはかなりの量の液体が入っている。


「よくそんなに沢山の涙を流せたな。一体何を想像したらそんなに泣けるんだ?」


「私くらいになればこれくらいチョロいものよ!女は涙が武器なのよ!」


まあ…ある意味武器だけど…


「とりあえずこれで回復系は大丈夫そうだな!」


「ですね、これで心置きなく敵に突っ込んで行くことができそうですね!」


「クライネは少しは考えて行動しろよ。今度の相手は今までとはレベルが違うんだから」


これで全員の準備が整った。


「よっしゃ、それじゃあ行くか!」





一度行った道は慣れもあるのか、前回あの森に行った時に比べてスムーズに向かえている気がする。


「前回の感覚的に森まであと半分くらいか?」


「そんなもんじゃないの」


「だと思いますよ」


ティアは街を出てから終始満足そうに涙の入ったビンを眺めており、クライネは早く敵と戦いたいと言わんばかりなウズウズしている。


「ところでシン!相手は幹部だけど何か対策はあるの?」


「俺もいろいろ考えたんだが、結局良い対策が見つからなかったから特に何もせずに行くことにしたぞ」


「はぁ⁉︎シンはいつも偉そげにしてるくせに自分だって適当じゃない⁉︎」


「どこかの泣き虫さんには言われたくないな!」


「誰が泣き虫よ!あんた達のために泣いてやったんでしょ!感謝してよね!」


「あーはいはい。ありがとうございます」


「ちょっとは感情込めなさいよ!」


「2人ともしょうもない話をしてないで先を急ぎますよ」


途中からクライネが俺たちを先導する形で森へ向かう。


あれ?実は俺もはたから見たら問題児なのだろうか…


いやいや、そんなわけない。


このパーティーで1番まともなのは俺のはずだろっ!






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