第13話 クエスト受注
2人に連れられて昼飯をお腹いっぱい食べた。
もちろん俺の支払いで…
「ねぇシン、ところでさっきの件について話してちょうだい!」
ティアは手でお腹をさすりながら満腹げな面持ちでこちらに目を向けてくる。
「そうですよ、ランチの間は考えたくなかったので聞いてませんでしたけど、そろそろ教えて下さい!」
「実は、かくかくしかじか…」
先程のお姉さんとのやり取りを説明した。
「つまり、話は聞くけどやるかどうかは別ってことかしら?」
「そうだとも!一応俺達もあの森とは関係もあるからな。あと、受付の姉さんがギルドの責任者の娘で…」
「ギルドの姉さんがなんて?」
「いやいや気にしないでくれ!まあとりあえずギルドに行って話を聞いてみようぜ!」
受付のお姉さんの件についてはまだ話さないでおこう…
再びギルド内に戻ってくるとだいぶ人も少なくなっていた。
受付のお姉さんと目が合うとテーブルの方を見てと目線を送ってくる。
目線の先には1人でテーブルに座っているこれまた受付のお姉さんと同い年くらいの女の人がいた。
「こんちには!私はエミーリアと申します」
近くまで寄ると丁寧にも向こうから挨拶をしてきた。
「どうも初めてまして!僕がシンで、こちらは仲間の能無しビビリのティアとおチビアイスのクライネです!」
パーティーを組んで初めてリーダーとして仲間を紹介した気がする。
まあ、みんなの特徴を端的に現すとこんな感じだろうか?
「ねえシン、誰が能無しビビリですって!」
「私のこともおチビアイスとか言ってませんでしたか?」
「ちょ、お前ら押すなって!」
左右から2人がぐいぐいと圧力をかけてきてかなり苦しい。
せっかくスマートな紹介をしてやったのに失礼な奴らだ。
「あの〜、そろそろ本題に入っても良いですか?」
エミーリアが困った顔で様子で話を進めようとしてくる。
「すみません。お願いします」
まだしつこく圧をかけてくる2人をぐいっと押しのけつつ本題に入る。
「実はですね、シンさん達が巨大ムカデを退治した後、森の危険度は一気に落ちたため採取クエストに出かける冒険者が増えました。私の彼氏のエーミールもその1人で何度か採取に行ってました…、同時にその頃あの森ではしばしば雷が鳴ることがよくありました。エーミールがいなくなった日も彼が採取に森に出かけた後、雷が鳴っていました…」
「つまりその…エーミールさんは雷と何か関係があるのではってことですね」
エミーリアは真剣な眼差しでこくりと頷く。
「しかも雷の原因が魔王軍の幹部ではとの噂もありますので心配で心配で…」
「エーミールさんはいつから帰ってきてないの?」
先程と打って変わってティアも真剣な表情で会話に参加してきた。
「昨日からです。まだ日にちは経ってませんが、今までその日の内に帰ってこなかったことはないので…」
なるほど、これはもしかしたら採取に行ったのものの魔王軍幹部と鉢合わせてしまいやられた可能性が高いな。
しかし俺たちの戦力では魔王軍幹部になんて勝てる見込みはないだろう。
ここは断ってもっとでかい他のギルドに依頼を…
「任せて下さい。必ずエーミールさんを探してきます!」
「って⁉︎このどチビがっ!!クライネは自分が何を言ってるのかわかっているのか?」
必死にクライネの襟元を掴んでゆすり説得を試みる。
「エミーリアさんごめんなさい。僕らよりも違う街のでかいギルドにお願いすれば…」
先程まで遠くて話を聞いていた受付のお姉さんが会話に割り込んできて
「こんな見捨てられた街に、他のギルドの…しかも上級者が来てくれるはずはないですよ!万が一にも来てくれてたとしても来るまでにかなりの時間がかかるはずです!」
言葉の裏には有無を言わせない強い意志を感じる。
「ち、ちなみにティアはどう思う?」
と言いつつ視線を向けると、ティアは両手で耳を塞ぎ目をギュッと閉じている。
あー、こいつ絶対雷のくだりあたりから話半分にしか聞いてねーな。
「わ、わかりましたよ。でもエーミールさんを救って魔王軍幹部を倒せるかまでは保証できませんからね!」
「ありがとうございますシンさん。心から感謝します!」
エミーリアさんが俺の両手をギュと握って見つめてくる。
あー、俺こういうのは弱いんだよな…
ひとまずトイレという理由で席をはずすと受付のお姉さんが寄ってきた。
「シンさんありがとう!実はエミーリアは私の親友で力になってあげたかったの…」
なるほど、そういう理由があったからこんなに必死になっていたんだな…
魔王軍幹部討伐はともかくエーミールさんはなんとか助けて出してやりたいな。
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