第8話 仲間募集

ティアがバイトを辞めた翌日、意を決してティアに切り出す。


「クエストには行くとしてもう1人仲間を集めよう!」


「えっ、私だけじゃ不安ってこと?」


ティアは動揺を隠せない様子でこちらを見つめている。


「不安もなにも…不安しかないわっ!!」


「そ、そんな…」


「そもそもティアは外面が良いこと以外はクエストはやめたいだの、バイトで生活するだのやる気のかけらもないじゃないかっ!!」


「うっ…だってあんなに大変だなんて思ってなくて…」


ティアはさらに動揺して口をアワアワしている。


「まあティアは初めてパーティーを組んでくれた恩義があるからこうして一緒にいるわけだが…」


「うっ、シン様!お願い見捨てないで〜」


「おい、そんなにくっつくなって!別にティアを見捨てたりはしないから!」


「本当?」


「おう、本当だ!」


やっぱり美少女に見つめられるとついつい許してしまう…


魔法でも使ってるんじゃないのか…


「とにもかくにも2人だけでは限界があるから、とりあえず仲間募集の紙を貼りに行くぞ!」





「シン、ここって…」


「そうだ!俺たちの約束の地であるステッキーだな!」


ステッキーの入口を前にティアは何やら乗り気じゃないらしい…


「ねぇシン…私も詳しくないけど、普通は仲間の募集はギルドの掲示板でするものじゃないの?」


「何もわかっちゃいねーな。ギルドだと使えるやつ、使えないやつがごちゃごちゃになってるからどういう奴が来るかわからんだろ!」


「はぁ…?」


どうやらティアはちっともピンときてないらしい。


「とりあえずはステッキーという素晴らしい店を利用しているならどうかが第一判断だ!」


「いやいや、それってただの掃除オタクが集まるだけじゃんっ!」


「あまいな、こんな言葉がある。"綺麗好きに悪いやつはいない"とな」


「いや、そんなの聞いたことないから!」


「とりあえず行こうぜ!」


店内に入り以前お世話になったお姉さんにお願いした所、二つ返事でOKとのこと。


「じゃあこれをお願いします!」


「わかりました。では次回ご来店時に募集の反応がありましたらご連絡いたしますね」


相変わらず愛想のよいお姉様だ。


「ところで、最近入荷した家掃除にうってつけの良い物がありまして…」


「話を聞かせてくれっ!」


「シンだめよ!私たちはお金がないんだからね!」


ティアに強引に店の外に引っ張られる。


「おい、せっかくの新作だったのに…」


「そんなお金がどこにあるのよ!まずは仲間を集めるんでしょっ!」


「なんでこういう時だけまともなんだよっ!」


「失礼ね!私はいつもまともよっ!」


冷静にティアの言う通りだし、早く仲間を集めてクエストに行かねば…





仲間募集の紙を貼ってから毎日ステッキーに通い続けたが特に音沙汰なく3日が経過した。


「さすがに、そろそろ1人くらいは募集が来てもいいんじゃないか?」


「あんなところに募集の紙をはるからでしょ!!」


「いやいや、そこだけは譲れないポイントだろ!」


「1番どうでもいいポイントよ!」


会話もそこそこに、今日もこりずに仲間を求めてステッキーに向かう。


「こんにちは!お姉さん!仲間募集の件どうなりました?」


「ちょうどよかったわ!仲間になりたいという子が来てるわよ!」


お姉さんは少し興奮した様子だった。


「本当ですか!ぜひ紹介して下さい!」


「シンすごい!やったわね!」


ティアは信じられないと言った表情を浮かべている。


案内されて店の奥の服コーナーへと向かう。


そこには何やら慎重に服を選んでいる同い年くらいの背の低い女の子がいた。


「あのー、君が仲間募集してくれた子かな?」


「あっ、はいっ!そうです!私はクライネと申します!」


元気な笑顔をこちらに向けてくる。


なるほど、背はかなり小さいが顔立ちは整っており美少女なのは間違いないな!


「シン、随分と可愛いらしい子ね…」


ティアは可愛いさよりも役に立つ子なのかが心配そうだ。


「とりあえず立ち話もなんだから場所を変えようか!」


3人で店を出てティアの前バイト先の酒場へ向かう。


第一印象はバッチリだな!


そして俺は清掃員として働いていたこともあり綺麗好きだ。


そして、綺麗=美しい=美少女=クライネ


つまり採用!







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