第4話 初回クエスト
不安なティアはさておき意気揚々とクエストに出発する。
場所も街外れで、さほど遠くないため特に準備もせずに行くことにした。
本当はお金がないからなのだが…
「場所はこの辺か…昼なのに随分と暗く感じるな」
目的の場所は街の外れの集落から少し離れたところにあった。
ゴミ屋敷の近くに来ると生ゴミのような匂いが漂っている。
「すごい匂いね。シンは平気なの?」
ティアは手で鼻を摘んで眉間にしわを寄せている。
「平気だぞ!まあ清掃員やってたくらいだから臭い匂いには慣れてるんだよ!」
「シンは無駄にハイスペックね」
「無駄は余計だろ!」
「でも実際シンはどんなスキルを持ってるの?私は何のスキルもないからシン頼みなんだけど…」
「まあ、清掃員時代から掃除に水を使っていたからな!水魔法は得意だぞ!」
ティアが顔をしかめる。
「他には?」
「水魔法だけだが」
「それ大丈夫なの⁉︎しかも水魔法って言っても掃除で洗い流すくらいでしょ⁉︎」
「心配するな!これでも清掃員の中では1番水魔法の扱いに長けていたからな!」
「母集団が清掃員しかいないんだから説得力ないよ!!」
途中から青ざめるティアをなんとか落ち着けて、目的のゴミ屋敷の方を向く。
ゴミ屋敷は立派な鉄格子の門に囲まれて、庭にはゴミが一面散らかっている。
「こんなところにモンスターなんているのか?普通の空き家に見えるけど…」
ティアがポケットからクエスト依頼書を取り出して文面に目を落とす。
「クエスト依頼によると…要は3Kだって…キモい、汚い、危険かしら?」
「それを言うなら、きつい、汚い、危険だろ!」
やれやれ…キモいなんて普通にモンスターをディスってるじゃねーか。
「とりあえず中に入るとするか…」
鉄格子の門は鍵がかかっているわけではなく、なんなく敷地内へ侵入できた。
あたりはゴミがそこら中に散乱しており屋敷の入り口まで進むのも一苦労である。
「しかし汚いな…」
「せっかくローブを新しくしたのに、こんなところを歩いてると汚れそう…」
門から屋敷までの半分程度の距離まで来たときふと違和感を感じる。
ゴソゴソゴソゴソ
「ねぇシン。何か音がしない?」
「音はするが辺りにゴミがありすぎてよくわからんな」
ティアが俺の背中にしがみついてくる。
ゴソゴソゴソゴソゴソゴソ
「ねえ、だんだん音が大きくなってる気がするんだけど…」
ティアがさらに強くしがみついてくる。
「落ち着けティア、これじゃあ動きにく…」
辺りのゴミから突然巨大なヘビがこちらに向かって大口を開けて飛びかかって来た。
「危ないっ!!」
目をつぶって動かないティアを抱えて間一髪でかわす。
巨大なヘビは再びゴミの中に姿を隠した。
「ティア、目を開けろ!あいつがパイソンに違いない。あいつを倒せばクエスト達成だぞ!」
興奮する俺に対してティアはガチガチ震えている。
「シン、私無理だよ〜」
「おい、何言ってんだよ!冒険者としてやっていくんだろ!!」
「だって怖いんだもんっ!」
再び近くのゴミの中からヘビが飛び出してきた。
「この間合いなら大丈夫だ。もう一度かわして…て、おいっ、しがみつきすぎだティア」
怖がるティアは俺の腰にしっかり両腕を巻き付けホールドしている。
「おい、バカっ!」
またしても間一髪のところでかわす。
「シンどうするのよ…」
「これじゃあキリがない。とりあえず敵の攻撃をわかりやすくするためにこのゴミを片付けるぞ!」
「敵に襲われている状況で片付けなんてできるわけないでしょ!」
「任せろ!これでもかつては清掃員として活躍してたんだ!これくらい余裕ってもんよ!」
「清掃員だったから不安なんでしょ!」
行くぜ!清掃員の中で最強の水魔法の使い手の力を!
「ゴッドクリアランス(神の清掃)!!!!!」
唱えると周辺の地面から大量の水が湧き上がり、津波のごとく周囲のゴミを1つ残らず洗い流していく。
「すごいわシン!ただの清掃員じゃなかったのね!」
「だから言っただろ!」
津波が去った後にはパイソンがかろうじて牙を地面に突き立てて流されまいと耐えていた。その顔はヘビのそれとは似つかわしくなくおぞましいもので、じっと見てると鳥肌が立つほどだ。
「き、キモい…」
最初にティアが言ってたように3Kの一つはキモいだったのかもしれない…
「あれで流されないとは…ならもう一発でお終いにしてやるぜ!」
「シン、やっちゃって!」
再度ゴッドクリアランスを放とうとした時、ヘビは地面から牙を抜き、すばやくゴミ屋敷の中に身を隠してしまった。
「ちっ、このままゴッドクリアランスを屋敷に向かって放って屋敷ごと破壊してやるぜっ!」
「シン待って!屋敷は破壊したらダメよ!」
「どうしてだ?」
「さっきのクエスト依頼書に書いてあったの!依頼主はパイソンを倒したら再度屋敷を使うそうよ」
「こんなところをまた使うのかよ⁉︎まあ、屋敷は破壊できないなら中に入って倒すしかないか…」
ティアの顔がみるみる青ざめていくのが分かる。
「わ、わ、私はここで待ってようかな〜」
「構わないが、俺が中にいる間に外にでてティアに襲いかかるかもしれないけどその時は足止めしといてくれよ!」
「も〜わかったわよ〜」
屋敷に向かう俺にしぶしぶティアがついてくる。
さて、そろそろ決着をつけるとするか!
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