第5話 屋敷のパイソン

屋敷の中に入ると案の定あたりはゴミでいっぱいだ。


「すごく汚いし…なんだか暗いわね」


「だがあれをみろ。急いで逃げたからか、あいつの逃げた場所だけゴミがないだろ」


「さすがシンね!ゴミのことならなんでもお任せね!」


「なんかその表現は嫌だな…」


ゴミがわけられた跡をたどり進んでいく。


「せっかくのローブが台無しになっちゃう」


ティアは両手で足下のローブを持ち上げる。


「心配しなくても洗えばすぐに落ちる。そういういいやつを買ったんだから安心しろよ!」


少しはティアの緊張もほぐれたかな。


ティアは足下を気にして歩く速度が落ちているが、俺はかまわず階段を上がり二階へと進んでいく。


二階に上がりヘビの跡を追ったがしばらく進むと壁にぶつかり終わっていた。


「壁で終わってるってことは…ここからは壁をつたって行ったということか…」


ボトンッ


「キャーーッ!!」


ふと後ろで何かが下に落ちる音と共にティアの悲鳴が聞こえて来た。


「ティア⁉︎大丈夫かっ⁉︎」


振り返ると先程の巨大なパイソンにティアが体全体を巻きつかれて身動きが取れなくてなっている。


「た…助けてシンっ!」


ここで技を出したらティアに怪我を負わせてしまう。


「おい、ティア!そいつから自力で抜けられないか?」


「何バカなこと言ってるのっ!無理に決まってるでしょっ!!」


なるほどね…ならばっ!


右手をティアの方にかざして


「ソープランド(泡の楽園)!」


かざした手の先から出た大量の泡石鹸がティアの身体に降り注ぐ。


「ぶえっ⁉︎何これっ⁉︎ヌルヌルじゃないっ!」


「それなら摩擦が減って抜けれるはずだ!今からパイソンに技を叩き込むから、それまでにヘビから離れろっ!」


「えっ⁉︎ちょっと待ってよ!」


なんとかティアがパイソンから抜け出す。


「いくぜ!スモールゴッドクリアランス(小さな神の清掃)!」


地面から先程よりかは少ないがパイソンを流すには十分な水が襲いかかる。


ギャャャャャャャャャャャャャャー


瞬く間にパイソンは押し流され、後ろの壁に強く打ちつけられ動かなくなった。


「よし!なんとか倒せたな!」


「なんとかじゃないわよ!私こんなにヌルヌルになって死にかけたんですけどっ!」


「しょうがないだろ!自力で抜け出せなかったんだから!」


美少女の全身ヌルヌルというのもなんともいいもんだな。


「もー、せっかくのローブも台無しだし…」


「まあ、クエストは達成したんだからよしとしようぜ!」


さすがに最初のクエストと言うこともあって疲れた。


お互いに力なく座り込み顔を合わせると自然と笑けてきた。


これが冒険者の生活か…仲間と共に目標を達成するのもいいもんだな。





ギルドに帰るとしっかり報酬を受け取ることができたのは良かったが、お姉さんのヌルヌルのティアを見た後に、俺を見る目がなんか冷たかった気がする…


まあ気にしないでおこう…


さっそく報酬を使って宿の契約を結んだ。


ギルドの外はもうすっかり夜になっている。


「どこかで晩飯でも食べて行くか?」


「私は早く宿でシャワー浴びたいんですけど…」


ティアのヌルヌルの服からは石鹸の良い香りがする。


「そうだったな…」


頬をポリポリかきながら宿に向かって歩き出す。


「ちょっと待ってよ〜!」


すぐにティアが追い付き横を歩く。


まったく人生ってどうなるかわかんねーな…













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