第1話 ホームレス・ティア
城を追放されてから行く当てもなく歩き続けて数日が経過していた。
清掃員の仕事は俺にとってやりがいのあるものだったが、賃金自体は決して高いものではなかった。
しかも城の清掃に関して、古い物を買い替えるときにはなぜか自腹をきっていたためか、貯金はあまり残っていない…
「今思えば、なんでみんなで使う場所の費用を俺が払っていることに違和感を覚えかったんだよ…俺のばかぁ」
とりあえずは新しい街で職を探すのが無難か…城でもない限り清掃員なんて仕事はないだろうし…
バックの中から地図を取り出して、適当にここから近くの街を探す。
「えーと…この近くの街は…メチャキタナか…」
乗り気がしない。
それもそのはず…この街は王国で1番汚いと噂になっている場所だ…
なんでもホームレスや民度の低い者たちが大勢住んでおり、まさにスラムと化した街というわけだ。
「元清掃員でキレイ好きの俺としては死んでも行きたくないのだが…背に腹はかえられないか…」
俺は全く乗り気にはなれないもののメチャキタナの街に向かって歩き出した。
街へ近づくとなんとも言いがたい匂いがただよってくる。
「おえっ…こんな所で俺は暮らさなきゃ行けないのかよ…」
街の中へ入ると基本的に立ち並ぶ家はボロく、道端にはホームレスらしき人たちが何人も横になって寝ている。
俺はそんな奴らをわき目にとりあえずギルドへと向かう。
「きっと、ギルドに行けば職や貸家についても助けてくれるだろう…」
なんとかこの街とは不釣り合いの立派な建物の前まで来ることができた。
「ここがギルドか、まあこの街のボロさを考えたらずいぶん立派な建物だな…」
そつと中に入り受付のお姉さんに話しかける。
「すみません。ここで職を探しています。あと家も借りたいのですが…」
お姉さんはけげんな顔でこちらを見てくる。
「わかりました。ところであなたはお一人ですか?」
「はい、そうですけど…」
お姉さんの視線がさらに鋭くなる。
「すみませんが、この街では1人で職につくことも家を借りることもできません」
お姉さんはもう用は終わったと言わんばかりにこの場を去ろうとする。
「待ってくれ!なんで1人じゃダメなんだ?
俺は少しならお金もあるし滞納や夜逃げは絶対にしない!!」
「あなたもこの街を見たんでしょ…ここは基本的に1人だけでは信頼がないとみなされるの…仮にあなたがどんなお金持ちであったとしてもね」
遠ざかるお姉さんは首だけこちらを向いてぶっきらぼうに言った。
「じゃあ…もう1人いればいいのか?」
「まあそうなりますね」
そう言ってお姉さんは受付の奥へと姿を消して行った。
くそっ!あきらめてたまるかよっ!絶対仲間を連れて戻ってきてやる!
「とは言ったものの、どうしたもんやら…」
俺はギルドの外で途方に暮れていた。
まあ現実的なのは、どこかのパーティーに混ぜてもらうことだが、冒険者としての実績のない俺なんてきっとどのパーティーもお断りだろう…
となると…残るはホームレスでも誘うしかないな…
「やっぱり無理だ…」
何度かその辺のホームレスに声をかけようとしたが出来なかった。
その後も街をぐるぐるしたものの、やはり結果は変わらず。
「くそっ、ここでも俺は必要とされないのかよ…」
あきらめかけたその時…ふと路地裏から視線を感じてそちらを見る。
路地裏には俺と同い年くらいの1人の少女がいかにもボロいローブを着て立たずんでいる。
「なんだ、またホームレスか…いやまてっ!なんだ…あの…」
確かに少女はボロい装いで風呂にもまともに入っておらず髪もボサボサだ。
しかしちゃんとした身なりをすればこの子は化けるぞ!
この綺麗好き(美少女好き)の俺が言ってるんだから間違いないはずだ!
「決めたぞっ!!お前を仲間にする!俺についてこいっ!!!」
彼女の瞳をまっすぐ見つめて俺はそう言い放った。
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