今日も夕陽を見なかった
朝一にやってきて
一日中パソコンを向き合い
日が出ている内は外に出れない
出たくない
出たら最後、どこか遠くに行きたくなる
ありがたくも食堂はあったし
まあまあの価格なラーメン一択
窓にはブラインド
から、漏れる日差し
今日は「暑かった」と
男が仲の良い人に言うのを隣で聞いた
(そうなのか)
一時間分の自由を得た終えたら
またパソコンに向かう
キーボードを叩く音がBGM
上司に確認をとったり
連携企画の声、声、声
こそこそ聞こえる声を
うるさいとは思わない
独りだ
ありがたいのかありがたくないのか
喋らなくても困らない職
一日中パソコンと向き合い
電子の文字や数字を計算したり
来たメールに返信する
ほとんど、クレームメールだけれども
つまらない職だとは思わない
これで、それなりの給金だし
ただ独りなだけで
ずっと画面を見て、叩き、一瞬だけ目を瞑る
カサカサした睫と目の端と端が痛かった
今日も喋らず終わり
身の周りを片付け、タイムカードを切り
忘れていた声で
「お先に失礼致します」と一礼
時計も気にしないでいたから
建物を出ると薄暗い
今日は「暑い」なら雲がない晴天を思い浮かべたのに
日も沈めば、なんてこともない
昨日と同じ終わりだった
支えられた体は朝日しか覚えない
嬉々として臙脂の夕日に囲まれていた
過去はどこにいったのだろうか
休日はあるはずなのに
カーテンは閉まったまま
布団は暗闇につつまれている
いつから
いつから
あ、むなしい
むなしい、むなしい、頭が痛い
頭痛薬を飲んで寝た
寝たら朝だった
朝食を作る、食べる、身支度を調える
きっと今日も夕日は見られない
とても悲しいことをしているような気がした
とても勿体ないことをしているような気がした
機械みたいな体は嫌いじゃない
得することが多いし
損をするのは「独り」だけ
食事を仕事を考えていれば陽は去って
また、夕陽が見れないだけで
……見ないだけ
夕陽を見ると帰りたくなる
あの日に帰りたくなる
まだ自由で大声で笑い歩いた日々が
過去に帰りたくなる
「五月病じゃないか?」
食堂で聞いた言葉に(そうじゃない)と呟く
ずっと、私は帰りたい
あの夕陽の中に帰りたい
臙脂を見ながら「きれいだな」と呟きたい
一日の終わりを見てみたい
きっとたくさん泣けると思う
体中に溜まった何かをぶちまけてしまったら
何もなくなるから
今 と 過去 が ごっちゃになって
涙から鳴くなっていくから
私は今日も夕陽を見られなかったと
嘘をつく
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