転ノ章

 目が覚めると慣れないベッドの上にいた。

「ここは……」

「どうやら目が覚めたようね。一唯翔くん」

 聞きなれた声に視線を移す。

「……双葉」

「まったく心配させないでくれよ。ああ、ここは私の実家。育野家の療養室だ。一応向こうで大嵩渚もそっちで眠っている。いやが予感がして父に聞いたんだ。彼女のことをね。そしたら長くこの土地で地脈を治めている一族というじゃないか。符号があって厭な予感がしてね。神社に向かったらことは終わった後、きみは気を喪って倒れていたというわけさ」

「……そうか」

 質問する暇もないほどにさっさとまくしたてられて言葉がない。

 が、どうしても気になることが一つある。

「えりかは……?」

「ハンバードが連れて行ってしまいました」

 部屋の奥の扉からさゆりさんが現れた。

「彼はおそらくえりかの存在を使って、こんどこそおのが宿願をかなえるつもりなのでしょう」

「宿願?」

「ええ。かの男の百年以上に渡る妄執です。一唯翔さん。どうか話を聞いてくれませんか? わたくしと」

「こいつからな」

 双葉はひょいと白衣の男の首根っこを掴んで連れてきた。

「詩郎さん⁉」

「うん。はい。詩郎さんです……」

「この親父、やっぱり色々知ってたうえで黙っていたんだ。軽く締めたら吐いたよ」

「はい。というわけでわたくしと育野から話をします。えりかの視点からだけのものではない。伏せられてた部分も含め、すべてを」

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