スケベ漫画の女子は"勃起"が"しばらく"したら"おさまる"ことを"知らない"。
「ヒーローさん、どうして昨日はにげたんですかー」
……。
「わたしのことがこわいんですかー」
……。
「わたしにおそれおののいているんですかー」
……。
「なにかこたえたらどうですかー?」
。。。
ごほん……どうやらおかしなことになったっぽい。
何故かはわからないがこの子は毎日やってくるようになっていた。
俺の特等席をまるで自分の特等席のように利用していて、今日なんて俺が来るより先に待機していて、顔を見せるなり「おそいですよー」とニヤつかれてしまった。
もうわけわかんない女子ぃ……。
懐かれているのは間違いない。ただそこまで懐かれるような真似をしたつもりはない。大体、俺なんて女子から好かれるようなタイプではない。
だから疑ってしまう。
なんらかの罰ゲームじゃないの?って。
「ヒーローさん。教室とはぜんぜんきゃらがちがいますね」
「え、」
「いつもしずかです」
……。
「わたしといるときはきんちょーしてるんですか?」
……。
そりゃするに決まっているじゃないかだって俺こと浜松敦という人間はこれまで一度たりとも女子という生き物と接してきた経験がないんだぞ?手も繋いだことだってないしき…きすだってしたことがないそんな人間の前にこんな可愛い生物が現れて思いっきりなつかれてしまったらどういう反応をすればいいかわ…わからないんだよなあ…え、え、笑えばいいって?ばかよせよ笑ってどうにかなる話じゃないだろ…だいたいな、俺の笑い顔ってよく友達からモチみたいって言われるんだぜ…焼いてさしょうゆをかけて食ったらさすっかり気分は“謹賀新年”おいなに人の顔をみてわらってんだてめえ!! 失礼にも程があるだろ!?
「ヒーローさん、なにをにやにやしてるんですかー?」
「え、」
「もしかしてえっちなことかんがえてました?」
「え、え、」
なんだこの質問。この子、スケベ漫画女子か!?
「は、は、は? 考えてねぇし……。す、スケベなことなんて考えてねえから! たとえ仮にだよ? たとえ仮に、そんなことを考えていたとして、君にそれを話すメリットなんてないじゃあないか! キスをしたいとか、手を繋ぎたいとか、おっぱいをもみもみしたいとか、パンツに顔を突っ込んでくんかくんかしたいとか、仮にそんなことを考えていたとしても……君にそれを話すわけがないだろう! バカにしないでくれ! ボクもう大人だかんな!? はしもとかーんな!!」
「ぜんぶいっちゃってますけどね」
彼女はそう言って手に持っていたミルクをちゅーちゅーと吸った。
ああ、そのミルクになって吸われたい。胃の中を暴れ回ってピロリ菌と化したい。
「まあでも」
彼女が髪を掻き上げる。
「別にヒーローさんがいいっていうのなら」
え、
「てをだされてもいいですけどね」
……。
なんて?
今、なんていいましたん?
…………。
「…………いやまぁそれは冗談なんだけどさ」
「あら」
ボケに対してマジレスなんてしないでくれ。
どうせ思っていないだろう。
自分を安売りするな。
「それより、その“ヒーロー”って呼び方やめてくんない? ……すごく恥ずかしい」
「ではなんとおよびすれば」
「デビッド・ベッカム」
「いやです」
「キアヌ・リーブス」
「いやです」
「マイケル・J・フォックス」
「やです」
「マーシャル・D・ティーチ」
「いやでーす」
全然言うこと聞かねえぞこの子!!
「じゃあ、もう佐藤健でいいよ……」
「健くん好きだからいやです」
好きなんだ……。やっぱりイケメンだもんなぁ。
「話変わるけどさ」
「はい」
「ポケモンに“トドゼルガ”っているんだよ」
「はい」
「こおりわりポケモンのあついしぼうって特性を持っているやつなんだけどさ」
「はい」
「ぜったいれいどって技がつよくて進化前はタマザラシといってすごく可愛くて…」
「そこまで説明しなくていいです」
「でさ」
「はい」
「俺、中学生の頃“トドセルガ”って言われてたんだ」
「あら」
「あついしぼうだから」
「なんと」
「ついついぜったいれいど打ちたくなったよ」
「そんなことが」
「それでさ、話戻すんだけど」
「はい」
「呼び方の話してたじゃん?」
「はい」
「できればこう呼んでほしい」
「なんですか」
「新田真剣佑」
「いやです」
なんでやねんっっ!!!!
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