伝説
「かの三剣、悪魔をも打ち倒し扉を開かん………」
「…………?」
暗い、光が僅かしか残らない部屋の中で、ムドウはそう呟いていた。
「なにしてるの?」
「ん?シズクか。起こしちゃったみたいだな。悪い悪い。」
私は、未だ慣れない自然な言葉を口にしながら暗い部屋にやってきた。
「それで、さっきのなに?」
「これか?これは、そう。俺の恩人がくれた宝物さ。」
「宝物?」
ムドウの手には、確かに赤く、宝物と呼ぶにふさわしい石が一つあった。
「ただキレイな石なんかじゃないぞ。これはな『試練の輝石』って呼ばれる代物だ。」
「…………?」
首をかしげる。
「『かの三剣、悪魔をも打ち倒し扉を開かん。』これは、この世界に残された古き文字列の一節だ。俺の恩人は自称考古学者サマでな、よく言ってたよ『この世界にはその昔、人間が生きていた』ってな。」
「それと輝石に関係が……?」
「こいつは、その自称考古学者————バフルスによる研究の過程で発見されたものだ。こいつが安置されていた遺跡には幾つもの文献が記された石板が発掘された。さっきの一節はそこから来ている。それによれば、どうやらこの世界にべらぼうに強い剣が三本存在するそうだ。」
(以下、考古学者バフルスによる独自研究によって石板に刻まれた文字列の一節を翻訳されたものであるため、実際の意味とは異なる可能性があります。御了承ください。)
この地、生まれながらにして地獄。
悪魔あふれ、人々は殺される時を待つ。
光は無い、味方も無い。しかし希望は残っている。
希望は剣に託した。
一つは空に、絶対の剣。
一つは少女に、無限の剣。
一つは世界に、解放の剣。
かの三剣、悪魔をも打ち倒し扉を開かん。
以上、少女遺跡群石板文字列第七章『嘆きと救い』より抜粋。
「俺の夢はな、その剣を探し出すことなんだ。前の調査もその一環さ。」
「力が欲しいの?」
「いや、剣を求めてはいるが力を求めている訳ではない。」
「じゃあ、どうして?」
「これは、バフルスの夢だったものだ。ある意味、奴の呪いかもな…………」
「?」
「まぁだからって、今更やめないけど。……この世界は、正直退屈だ。お前も早く目標を作れよ。」
「はーい。」
私はフランクに手を挙げた。
「じゃあもう寝ろ、遅いからな。」
……これは彼女がこの街にやってきて、数年後の出来事である。
彼女の正体を、ムドウは未だつかめていない。
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