ケツイ

 やはり、気になる。

シズクと出会って数年。それほどの日々の中で培われた違和感が、俺を襲う。

彼はまどろみの中、シズクの腕を見つめていた。

やはりその鋼鉄腕は暗闇の中で、黒く、重く、光り輝いている。

「…………。」

それは、率直にいってありえないものだ。あってはいけないものだ。

おかしいだろ?普通ニンゲンの腕の片方が金属でできてるなんてよ。

「やっぱり、行くしかないのか。」

意味など無いと、彼は知っていた

でも、俺は………


 もう一度、あの森へ向かう。シズクの生まれ落ちた場所を、この目で見てみたい。

そういった感情が強くなっていた。

「…………シズク、おい起きろシズク。」

「何?人でも死んだ?」

物騒なことを寝ぼけながら話すシズク、いつも通りだ。

「明日、再びあの森へ向かう。お前が眠ってたっていう場所を見に行くためにな。」

「りょーかい。でも私、ついていくだけだからね。」

シズクは冗談のように啓礼した。

明日。そう、全ては明日から始まる。


この、腐った世界の物語が。


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