お隣さん
「しかし凄いな、ちょっと教えただけでモノにするとは。」
少女と俺は今、薄暗い森の中を歩いていた。
「ちがう、ムドウが、おしえるの、うまい。」
「俺が?そりゃねぇよ。」
「街、着いたらムドウに、いろいろと教わりたい。」
「そうか?そりゃあうれしい提案だが……正直、お前には戦ってほしくない。」
「どうして?私は戦いたい。」
「……うまく言えないんだけどな、お前はもっと、戦うなんかよりも合ってる世界があると思うんだ。」
「そうなんだ。」
「まぁ、そういうコトだ。……さて、この話おしまい。向こう着いたら、色々決めるぞ。」
「うん。」
少女たちは街へ、歩みを進めた。
***************
目覚めは、悪い。
けたたましいアラームが俺———ゲイルをまどろみから連れ出した。
「馬鹿が。なんでアラーム切り忘れてんだよ。」
デジタル式の目覚まし時計を止める。
「まったく、こいつも煩くなきゃ便利なんだけどな。」
ゲイルは、昨日買ってきたデジタル時計を一瞥し、ベットの上から退いた。
*****
音が、鳴る。
「はーい、誰ですか!」
威圧を込めた声を一つ、ゲイルは扉の方にぶつけた。
「俺だ、ムドウだ!ちょっと話したいことがあってな!」
「ムドウ!お前、森から帰ってきたのか?」
「そうだ、いいからドアを開けてくれ!話したいことがある!」
「分かった!」
そして、俺は玄関へと向かう。その道中は、男の一人暮らしを体現するように乱雑だった。
そしてドアを、開ける。
そこにいたのは、久しい友人と…………白い、無地のシャツを着た少女がいた。
「…………。」
少女は口を割らず、しかして友人の背後には、明らかな不満が感じ取れた。
「ムドウ、この子誰だ?」
再開した友人にむけ、最初に放った言葉がそれだった。
「ん?あぁ、こいつか。こいつはな、森で拾ってきた。名前はシズク。さっき決めた。」
シズク、そう呼ばれた少女を一瞥した。
「さっき決めたって…………えぇっ!どういうことだよ!?第一、森に人間が住んでるなんて聞いたことないぞ!?……まさか、新しい参加者とかないよな?」
「……詳しいことは俺にも分からん。だが、このままほっとくわけにはいかないだろう?」
「確かにそうだけど…………」
「この子はウチで預かる。その内、素性とかが分かるだろ。」
「………分かったよ、理解した。よろしくな、シズク。」
「……よろしく。」
少女はたどたどしく、そう口にした。
こうして少女————いやシズクは、ここ『居住区』の住人となった。
総人口は5人である。
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