Case21 お金持ちを夢見る男子中学生の話21
僕は独りぼっちになった。
次にいつあの男が来るか分からない。それまでに500万円用意しなければならない。
真っ暗な部屋で、独り何時間も涙を流した。
世の中金だよ。金があるかどうかで人生決まるんだ。
錦鯉の男の言葉が頭に響く。そうだ。金だ。金を集めなければ。
僕は家中を探し回った。貯金箱を狂ったようにハンマーで叩き割った。引き出しを全て引っ張り出して金になりそうなものを全て探し出した。しかし碌なものは見つからなかった。
出て行った父が、金目のものは全て持ち去って行ってしまったのだ。
僕は絶望感に打ちひしがれながら夜更けまでぼんやりとしていた。やがて締められたカーテンの隙間から青白い光が漏れ始める。鳥達の鳴き声が外から聞こえてきても、僕は絶望したまま独り座り込んでいた。
その日の学校は休んだ。次の日も、その次の日も。
やがて僕の家の固定電話が鳴り響いた。僕は立ち上がり、恐る恐る受話器を取る。
「こんにちは。〇〇中学校の浜野です。」
電話の相手は担任の浜野だった。僕の手は震えた。もしも浜野に助けを求めれば、助かるのだろうか。
せんせい‥
僕が言葉を発しようとした時、家の玄関の扉が開く。僕は慌てて受話器を置く。
「邪魔するぜぇ〜」
玄関の方から聞いた事のない男の声がする。男は土足のまま僕のいるリビングに入ってきた。無精髭を生やした、強面の男だった。派手なシャツと黒色のダボダボなズボンを着ている。
「ガキ!金作ったのか!?」
男は入ってくるなり、ポケットに手を突っ込んだまま僕に顔を近づけて言った。
僕は何も言えず、少しだけ顔を横に振った。
「てめぇ、何しとったんじゃ!」
すかさず男は僕を蹴り付けた。僕は体を縮こまらせて男の蹴りを受ける。男は何度も僕の背中を踏みつけるようにしてから、僕の右腕を乱雑に掴むと強引に立たせる。それから僕の髪の毛を鷲掴みにして言った。
「お前、兄貴が言ってた事覚えとるんけ?お前はわしらの奴隷やんけ。金稼げねぇんやったら地獄見ることになるど?」
僕はそのままグッと髪の毛を引っ張られて、床に叩きつけられる。
男が出て行っても、僕はあまりの身体の痛みにしばらく動けなった。それに怖くて、悔しかった。お母さんは今も辛い思いをしているのだろうか。そう思うと、悔しくて涙が出た。
金だ。金を稼がないと。
僕はおもむろにパソコンを開いた。元からネットサーフィンが趣味だった僕は必死でネットの中に金を稼ぐ糸口を探した。朝も夜も構わず探し続けた。目の下にクマができて、頭が全く回らなくなるまでパソコンに向かった。
そうして僕は、「仮想通貨」に辿り着く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます