Case17 お金持ちを夢見る男子中学生の話17
刺青の入った男は綾乃に手錠を掛けられ、連れて行かれた。木下はふぅと息をつくと残りのタバコをうまそうにふかした。
「木下警部。先程は助けていただき、ありがとうございました。私と同行していた少年は右腕を打って打撲跡がありますが、骨は折れておらず、今のところ他に怪我は見られません。」
京太郎は木下に駆け寄ると敬礼をしてから言った。
「おう。京太郎。久しぶりじゃねぇか。相変わらずお嬢と仲良くやってるか?」
「はい、幸田先輩とは問題なく業務を行えております。」
「ばぁか、そんな真面目な答えが聞きたかったわけじゃねぇよ。」
木下はつまらなそうな顔をする。
「で?そっちが例の同行してた子?」
「はい、名前は純太君と言います。」
京太郎の隣に立つ純太は顔を伏せていた。慣れていない大人を前にすると純太は妙に引っ込み思案になった。木下は携帯灰皿でタバコの火を消すと、かがみ込んで純太に声をかける。
「純太君か、大変だったな。」
それに対して純太は俯いたまま何も答えなかった。木下は立ち上がる。
「どーすっかなぁ、パトカー2台もオシャカにしちまって。京太郎、お前この子家に送るとこだったんだろ?」
「はい。」
「とりあえず、もうすぐ応援が来るだろうから、それに乗せて送ってやってくれ。後の事情聴取とかも含めてしっかりな。」
「承知致しました!木下警部は?」
「オレはあの男を署に連行して取り調べだ。全く骨が折れるぜ。」
木下は刺青の男を親指で指して言った。
「木下警部が追っているホシという事は、例の男がこの件に絡んでいるのでしょうか?」
「ああ、間違いなさそうだ。捕まえた男の刺青は奴の組特有のものだったしな。それにあいつが言ってたカイトって奴も気になる。」
木下は神妙な面持ちで言った。
数分も経たず、その場には何台ものパトカーが駆けつけた。
「京ちゃん!大丈夫!?心配したよ!!」
「森山京太郎!貴様、一晩で何回大騒ぎを起こせば気が済むのだ!」
涙目の幸田と仏頂面の星野が京太郎に向かって声を上げる。
「幸田先輩、ほんとうに申し訳ありません。星野もすまなかった。」
京太郎は2人に頭を下げる。
「謝らないで。京ちゃんは悪くないよ。ほんとに無事でよかった。」
幸田は涙目のまま言った。
「貴様の身体などどうなろうが知ったことではない。だが、幸田さんにこれ以上心配をかけるな。」
星野はふんと鼻を鳴らしていう。
そんな星野に京太郎はもう一度、すまんと言う。
「それから例のもの、ちゃんと押収しといてやったぞ。汚い仕事をさせてくれたものだな。
貴様何か考えがあるようだが、本当に任せて大丈夫なんだろうな?」
そう尋ねる星野に対して、京太郎は真っ直ぐに星野の目を見て言う。
「星野、助かる。大丈夫だ。純太君の事はオレに任せてくれ。」
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