Case16 お金持ちを夢見る男子中学生の話16
木下はタバコを咥えたまま綾乃に取り押さえられたサングラスの男を見下ろした。
「てめぇ!くそ!はなせ!」
男は怒鳴り声を上げるが、綾乃がより一層強く締め上げるとうめき声を上げて叫ぶのをやめる。木下は深くタバコの煙を吸い込むとふぅーと闇夜に向かって長く息を吐いた。
「オレが長年追ってるホシがな、最近碌でもねぇ詐欺まがいの事をはじめやがったんだ。まぁ、やってんのはそいつの組のもんなんだろうけどな。」
男は地面に押さえつけられたまま木下に向かってぺっと唾を吐いた。しかしそれは木下の元まで届かず、情けなく地面に落ちる。
「なんの話しとんだコラ。」
木下は眉間に皺を寄せて男を見る。
「綾乃ぉ〜、ちゃんとおさえとけよ。」
「抑えてますよ。」
綾乃は半笑いで答える。
「お前、口答えすんじゃねぇ。」
木下は綾乃を叱りつけると、それからポケットから携帯灰皿を取り出すとタバコの火を消した。
「で、ちょっと気になる事があってな。最近小耳に挟む詐欺にはふた通りのやり方があってな。一つ目は一般人に身に覚えのない請求をする昔ながらのやり方。今日の夕方頃にパクったやつは警察へのなりすましをしてたな。まぁ、そんな頭の悪いことしか思いつかない奴らだ。トラックで頭から突っ込んでくるとかな。」
木下はしゃがみ込むと男のサングラスを外す。目線だけで木下への殺意が伝わってくるほどに厳つい目をしていた。しかし、木下は少しも動じる様子がなかった。
「お前、あいつの組のもんだろ?身体の模様見たら分かる。あいつが今どこにいる?どうしてトラックで突っ込んできた?」
木下は顎で純太の方を指す。
「勘だがあの子の命を狙ってきたんだろ?なんのためだ?」
サングラス男は何も言わなかった。ただ黙って木下を睨みつけていた。木下はゆっくり立ち上がると話を続ける。
「詐欺の話に戻るとな、最近耳に挟む二つ目の詐欺のやり方ってのが情報商材やらなんやらを使ったものだ。これも勘だが、そう言う知的なのはお前らのやり方じゃねぇ。最近幅利かせてる詐欺を働く輩はお前ら意外にもうひとグループある。お前、それについて何か知らないか?」
木下が話し終えると、その場は沈黙に沈んだ。
「だんまりか。」
しばらくして木下か呟く。そして2本目のタバコを取り出し、火をつける。その時、
「カイトだ。」
ヤクザの男はボソリと言った。
「あ?」
「カイトってやつがてっぺん張ってる詐欺グループだ。」
木下は深くタバコを吸い込むと、はぁーと煙を吐き出して言った。
「ムショで詳しく聞かせろ。」
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