Case15 お金持ちを夢見る男子中学生の話15

「純太!大丈夫か!?」


京太郎は衝撃が収まると隣に座る純太の安否を確認した。純太は怯えきった様子で何度も小刻みに頷いた。

京太郎は自分のシートベルトを外すと純太のものも同じように外してから車外へと出た。


外は大惨事になっていた。パトカーは側部がぺしゃんこになり、窓ガラスがバリバリに割れ、辺りに飛び散っていた。


「警部!木下警部!」


京太郎は叫んだ。


「ここだ。」


京太郎の背後の陰から、長身で眼鏡を掛けた男がヌッと現れる。


「はっ!ご無事で何よりです!」


京太郎は木下に敬礼する。


「死ぬかと思ったよ。」


さらにもう一台その場に駆けつけたパトカーの窓が空き、載っている警察官が叫ぶ。


「警部!星が逃げます!」


見るとパトカーに衝突したトラックの運転席が開かれ、両腕に刺青を入れたサングラスの男はその場から逃げようとしていた。


「綾乃!何してんだ!捕まえろ!」


「えぇ」


パトカーに乗った綾乃警部補は犯人の取り押さえを押し付けられた事に慌てふためきつつも、ドアから飛び出して、


「止まりなさい!」


と叫ぶ。


「私も行きます。」


京太郎がそう言うのを木下は制す。


「怪我してるかもしれないから休んでろ。」


「しかし‥!」


京太郎がそう言い終わる前に、トラックの近くから男のうめき声が聞こえた。

見るとサングラスの男は綾乃警部補によって完全に地面に押さえつけられていた。

京太郎は信じられない気持ちで見ていた。たしかに綾乃は格闘技最強で有名だった。しかし、実際の綾乃は小太りで身長も高くなく、とても丸太のような太い腕を持った大男を捩じ伏せられるようには見えなかったのに。


「怪我ねぇか?」


木下が低いシックな声で尋ねる。


「はい!」


「あっちは?」


木下がタバコを取り出しながら、助手席に座る純太の方を顎で指す。


「確認致します。」


京太郎は走って純太の元まで行き、助手席の扉を開ける。


「純太、大丈夫か?怪我ないか?」


「いってぇ。最悪だよ。右腕打った。折れた。」


京太郎はその言葉に純太の腕を取り、手持ちのライトで明かりをつけて見た。たしかに腕には打撲跡が出来ていたが折れては無さそうであった。京太郎は安堵すると、


「降りれるか?」


と純太の方に左手を差し出して尋ねる。純太は頷くと右手手を取り、車外へと出る。


「もうダメかと思った。」


純太は力の抜けた声で言った。


「オレもだ。運が良かったな。」


京太郎は純太の怪我の具合を木下に報告しようとしたが、木下はすでに両腕に刺青が入った男の取り調べに入っていた。

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