Case13 お金持ちを夢見る男子中学生の話13

 周りの警官達に散々白い目で見られた後、ようやく京太郎は純太を捕まえた。その頃にはとっくに二人とも息が上がっていた。


「おら、捕まえたぞ。お前はそろそろうちに帰れ。」


「えー、やだよ。」


純太はいかにも不満そうな顔をして言った。


「淳太君、わがまま言っちゃだめだよ。京太郎お兄ちゃんも一緒に行くからお家に帰ろ?」


幸田は純太の目線まで屈んで言った。


「ちぇっ、つまんねーの。」


純太はそう言ったが、意外にも幸田の言うことは大人しく従った。


「私は星野さんに送ってもらうから、京ちゃん幸福課のパトカー使いなよ。」


京太郎はそれに了承した。正直、星野と幸田が2人車内で2人きりと言うのは気に食わなかったが。


「なんだ、森山京太郎。何か不満か?」


「ちゃんと幸田先輩を送り届けるんだぞ。」


「言われなくてもだ!麗しの幸田さんはこの星野が安全に送り届ける。貴様はせいぜいガキのお守りでもしてろ。」


星野は吐き捨てるように言った。京太郎はその言葉を聞くと星野に近づき睨む。それから星野にだけ聞こえる声で囁いた。


「頼みがある。」


 京太郎は助手席に純太を乗せて夜中の道をパトカーで走った。


「なぁなぁ、サイレン鳴らしてみてくれよ〜」


と純太ははしゃいでいた。


「パトカー乗るのは初めてか。」


「まぁなぁ。普段はいい子ちゃんだからな。」


「いつもいい子にしてろよ。」


「そんなん無理ぃー」


純太は切れそうに細い目をさらに細めて言った。パトカーは赤信号で止まる。


「で、マッポの兄ちゃんはあのおっぱいおっきいおねぇちゃんとどういう関係なんだよ?」


「お前はまた舌の根が乾かないうちに下らない事言いやがって。先輩と後輩だよ。」


信号は赤からなかなか変わらなかった。


「まじ?付き合ってんじゃねぇの?」


「そんなんじゃねぇって。」


「んじゃ付き合いたいって思うの?」


「何言ってんだ。」


「‥‥‥‥‥。」


「‥‥‥‥‥。」


「マッポの兄ちゃん。」


「なんだよ?」


「信号、青だぜ。」


「‥‥‥‥ああ。」


京太郎がアクセルを踏むとパトカーは再び闇の中を走り出した。しばらくパトカーは夜の道を一定の速度で走っていた。

さすがに夜遅いので、交通量もそんなに多くない。走っていても、夜中に荷物を運ぶトラックがほとんどだった。


「お前さ。」


長い沈黙を破るように京太郎は前を見たまま言った。


「お金があれば本当に幸せになれるって思ってるのか?」


「何だよ急に。そんなの当たり前だろ?」


純太は両手を頭の後ろで組んで、だるそうに答えた。


「当たり前、か。」







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