Case12 お金持ちを夢見る男子中学生の話12

 事件すぐに大ごとになった。夜にはパトカーが何台か駆けつけ、郊外にあるなんの変哲もないマンションを不気味に紅く照らした。


 被害者は3人。トオルと呼ばれる図体が大きく、ロン毛の男。そしてその母、リビングに倒れていた中年女性。それからトオルの弟だ。トオルの弟は奥側の部屋で、トオルと同じように意識を失った状態で京太郎と純太が見つけた。

3人とも命に別状はないものの、すぐに病院に運ばれ、未だに意識が戻らないとの事だ。


「とりあえず、3人の意識が戻るのを待って事情聴取するしかないようだな。」


現場に駆けつけた星野は言った。それから京太郎の方を向く。


「本当に犯人の手がかりになるようなものは何も見てないのか。森山京太郎。」


京太郎はああ、と言う。


「ほんとうだろうな?」


星野はなおも食い下がってくる。


「なんだよ?」


「オレはそのガキが怪しいんじゃあないかと思っているんだ。」


星野は純太の目の前まで歩いていき、彼を見下ろして言う。


「何をばかな。」


京太郎は鼻を鳴らす。純太は何も喋らなかった。心を開いていない大人の前だとめっきり無口になるのだ。


「さっき言った通りだ。この子は河原で他の中学生達に暴行を受けていた。見ての通り無口なやつだから、自分の家の事は何も喋らなかったが、友達の家に行きたいと言いだした。だからオレ達はこの家に来た。そしたらこの有様だ。」


星野は京太郎を睨んだ。


「貴様、警察は子守じゃないんだぞ。」


「あ?」


京太郎は星野を睨み返す。


「ちょっとやめなよ二人ともー。」


幸田はいつも通り一触即発のところで二人の仲裁に入った。幸田がいなければ殴り合いの喧嘩に発展していただろう。星野は舌打ちをすると京太郎から離れた。


「何だあいつ!」


純太は口を尖らせて言う。


「結局マッポにろくな奴はいねーな。」


そう言う純太を京太郎は小突く。


「ちょーしのんな。」


「いってえなぁ。」


幸田はそんな二人を見て笑った。


「なんか兄弟みたいでかわいい。」


「誰がこんなやつと!」


京太郎と純太は二人で声を揃えて言った。

幸田は何かつぼに入ったのか腹を抱えて笑っていた。まったく、かわいいのはどっちやら。京太郎が間抜けな顔で爆笑する幸田を見ていると、純太はニヤッと笑った。


「あー、マッポの兄ちゃんとこのおねぇちゃんそう言う感じなんだぁ。」


「な、お前!いい加減にしろ!」


京太郎が再び純太を小突こうとすると、純太はひょいと身を躱した。


「やーい、この変態エロエロじじい!殴れるもんなら殴ってみやがれ〜」


純太は京太郎から離れるとこちらに向かって小躍りをして戯けて見せた。

やれやれ。中学生ってやつは。


「待てこらー、逮捕すっぞ!」


京太郎は全速力で純太を追いかけた。

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