Case9 お金持ちを夢見る男子中学生の話9

「ぷ、バカなガキ」


富永が吹き出す。


「なんだと!?」


そんな富永に純太は突っかかるように大声を出した。


「お金じゃ幸せは買えないのよ〜」


富永が純太に向かって言う。


「はっ、お姉ちゃんこそ馬鹿じゃねぇの!?お金がなくてもお姉ちゃん幸せだって言えんの?」


「馬鹿じゃないですぅ、これでも一流の進学校通ってますぅ。成績は底辺だけど。」


富永が最後にボソッと付け加えた言葉に、こいつ学校戻ってから苦労してんだなぁ、と京太郎は思う。


「もうやめなよモエピー、大人げないよー」


幸田に諭され富永はしゅんとする。純太はニヤニヤと不快な笑みを浮かべながら富永に言葉を発さずバァカと言った。

そんな純太の姿を見て京太郎は幸田に言う。


「とりあえず、純太くんはオレが家に送り届けるでいいですかね?道すがら純太くんを襲っていた中学生の事は聞いておくんで。」


「え?別にいいけど。親御さんにここまで来てもらった方がいいんじゃない?」


「は?絶対やだね!てかオレ1人で帰れるし!」


純太はそう言うと交番を出て行こうとする。

京太郎はすかさず純太の首根っこを掴んだ。


「まぁ、こいつの事はオレに任せといて下さい。」


「まぁ、京ちゃんがそう言うなら。」


と幸田は言った。


京太郎は純太について、彼の家まで歩いた。

やはり家はそう遠くないところにあるらしく、

意外とあっさりと案内してくれそうだった。


「ところで純太。お前、西区にあるショッピングモール分かるよな?映画館があるとこだ。」


「うん。」


「この前の日曜の事だ。お前、ガタイの髪の長い男と一緒にフードコートにいなかったか?」


「‥‥‥いた。」


純太は隠す様子もなく答えた。


「一緒にいたあれは誰だ?お兄ちゃんとかではなさそうだったけど?」


「‥‥‥同級生の、お兄ちゃん。めちゃくちゃヤンキー。」


「なんで同級生のお兄ちゃんと一緒にいたんだ?」


「それは‥‥」


純太はここで初めて言葉に詰まった。


「よく分からないけど、成り行きで。」


「成り行き?」


京太郎は訝しんで聞き返す。


「うん、最初はオレの同級生も一緒に遊んでたんだ。あの人もう働いてて、お金もいっぱい持ってるから、カラオケとかお寿司とか全部お金出してくれて。」


京太郎は純太の話を聞いているうちに段々と話の流れが読めてきたような気がした。


「それからしばらくして、2人で会おうって誘われたんだ。」


「それで?純太はOKしたのか?」


「そりゃあ断る理由もないし。ご飯奢ってくれるし。」


「あの日2人でなんの話してたんだ。」


「それは‥‥」


純太はそこで足を止める。京太郎も一緒に立ち止まる。


「それは‥‥?」


「‥‥‥仮想通貨の話。」

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