Case7 お金持ちを夢見る男子中学生の話7
京太郎は純太少年を連れて自転車をおしながら交番に向かった。夏のピークは過ぎたとはいえ、未だに厳しい残暑が続いている。
自転車を押しているだけで汗が噴き出てくる。
純太は隣で黙って歩いていたがやっぱり暑さで辛そうにしていた。
交番の前までたどり着くと、中からギャハハハと品のない笑い声が聞こえ、京太郎のだる気が倍増したような気がした。
あのJKまた来たのか。
京太郎は心の中でため息をつく。
「まじ、京太郎さんあの顔でキウイ好きってウケんすけど。」
富永モエは京太郎の椅子であぐらをかいて爆笑していた。
「はいはい、悪かったな。」
「あ、京ちゃんおかえりー。」
幸田がのんびりした声で出迎えてくれる。
「京太郎さんの席、ねぇから!」
「お前よくそんな古いドラマ知ってんなぁ」
「名作っすよ。」
富永モエは親指をグッと立てて言う。
「京ちゃん、これ!モエピーの差し入れ!」
幸田が差し出したビニール袋の中にはゴリゴリ君のソーダ味が2つ入っていた。
「お、気がきくじゃないか。と言いたいとこだけど警察官は民間人からものは貰えないぞ。」
そういえば幸田先輩にアイス買ってくるの忘れたな。まぁいいか、元気戻ったみたいだし。
「まぁまぁ京太郎さぁん、そんな固いこと言わずにぃ」
富永が長い黒髪を耳に掛けながら上目遣いで言う。なんのつもりだ。
「えー、そうなの!?」
「幸田先輩なんで知らないんですか。女子高生からものもらえないですよ。」
「せっかく買ってきてあげたのにぃ。じゃ私とそこの男の子とで食べちゃうっすよ。」
富永は拗ねたような顔をしてから、純太の方を見て言う。純太は警戒するように京太郎の後ろに隠れながら富永の様子を見ている。
「その子がさっき言ってた子?」
幸田は京太郎に尋ねる。
「はい、河原で複数人の少年達から暴行を受けていたので保護してきました。」
「京ちゃんえらい!」
「ほーら、おねぇさんがゴリゴリ君あげるよ〜。こっちおいで〜。」
富永がアイスをエサに純太を吊り出そうとする。
「お前はまた、バカな真似やめろよ。」
京太郎は呆れた顔で言う。しかしそんな京太郎に反して、純太は京太郎の体の影から恐る恐る姿を現し、富永に近づいた。
「ほら、中坊なんて単純っすよ。」
富永が自慢顔で言う。
しかし次の瞬間純太は富永の手からアイスを奪い去るように取ると、走って京太郎の体の影に隠れ、パッケージを開けてものすごい勢いでゴリゴリ君を食べ始めた。
「なーんか可愛くないガキっすね〜」
富永が低い声を出す。
「そんなに焦って食べると頭キーンってなっちゃうよ?」
幸田はそんな呑気な事を言ったが、京太郎はアイスを貪り食う純太の姿がどこか狂気じみて見えた。
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