Case6 お金持ちを夢見る男子中学生の話6

「いって、何するんだ!」


京太郎は少年に向かって怒鳴る。

だが、少年は京太郎の腹のあたりに顔を埋めたまま離れようとしなかった。

京太郎はハッとした。この少年はもしかして、先日ショッピングモールで派手な髪色をした男と一緒にフードコートで話をしていた少年ではないか?


 あの時見えたのは少年の後ろ姿だけだったので京太郎は確信が持てなかったが、おそらく同じ少年ではないかと言う気がした。

それと同時に、京太郎の脳裏に大柄の男の姿が思い出される。


金さえあれば幸せになれる


「おい、いい加減離れてくれないか?他の3人はもうどっか行ったぞ?」


京太郎が声を掛けると少年はようやく顔を上げる。前髪が少し長く陰気な感じで、一重の瞳は細長く悪賢そうな印象を与えた。体全体で見ると中学生の中でも小柄な方だ。


「なんで邪魔したんだ?」


京太郎は少年の腕を解いてから尋ねた。


「オレ、何もされてない。」


少年は答える。


「嘘つけよ。唇から血出てるぞ?」


京太郎はそう言うとポケットからティッシュを取り出し嫌がる少年の唇から出る血を拭った。


「君、名前は?」


少年は黙っている。


「学校はどこ?」


少年はなおも黙ったままである。


「あのなぁ、黙ってちゃ分からないって。」


「‥‥‥。」


「‥‥‥。」


「‥‥‥純太。」



しばらく沈黙が続いた後、少年はボソリと言った。


「そうか。純太か。年は?いくつだ?」


「‥‥‥13歳。」



京太郎はそれを聞くとそうか、と言ってから無線で幸田に連絡を取った。


「幸田先輩。森山です。河原で暴行を受けていた少年を保護しました。名前は純太くん、13歳です。そちらに連れていきます。」


ザザッと言う無線の音の後から幸田の声が聞こえる。


「京ちゃんおつかれ!了解だよ。暴行って大丈夫なの?」


「唇切ってますけど、本人は大丈夫そうですよ。」


無線でそう答えると京太郎は純太の方を見て、

大丈夫だよな?と目で問いかける。

純太は控えめに頷いた。





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