Case5 お金持ちを夢見る男子中学生の話5
涼しい風に吹かれて、京太郎は河川敷沿いの通りを自転車で走った。今日も街が平和である事を願う。詐欺集団なんかに誰も関わらず、なんの問題も起きず今日一日がただ平穏に流れていけばそれでいい。河原からわずかに人の声が聞こえる。
「とっとと金出せよおら!」
「持ってねーってんなら服脱げよ!」
「こいつ泣いてやがるぜ、だっせー!」
ああ、今日も一日平穏に流れていけば、それでよかったのに。
河原の方を見ると3人の少年が1人の男の子を取り囲んで、殴る蹴るなどの暴行を加えていた。中学生ぐらいだろうか。
京太郎はやれやれと思い、道端にスタンドを立てて自転車を停め、
「君達、やめなさい!」
と叫びながら河川敷の階段を降りていった。
中学生たちは手を止めてこちらを見る。
暴行を加えていた3人のうち2人は、京太郎の姿を見てやばい、と思ったのか後退りをするが、1人のリーダー格の少年はこちらを睨みつけた。
「おいおいマッポがなんのようだ、あぁ!?」
そいつはギラギラした装飾のついたキャップを後ろ向きに被り、両手を派手なジャージのポケットに突っ込みながら、ガンつけるような形で京太郎に迫ってきた。
威勢がいいやつもいたもんだ、と京太郎は思う。
「はいはい、君達、今恐喝してたでしょ?
それ犯罪だから。それから3人でこの子殴ってたでしょ?あーあー、ひどいね。血が出てるじゃん。これ、暴行罪通り越して傷害罪だからね?」
京太郎は淡々と言う。暴行を受けた少年はまだ起き上がる事が出来ずにその場でうずくまっていた。
「だからなんだよ!?オレら少年法で守られてんの!マッポに出来る事なんかねぇって!どっか行けよ!」
リーダー格の少年のその言葉を聞いて、他の2人も安心したのか、そうだそうだと野次を飛ばす。
「君、歳いくつ?」
京太郎はリーダー格の少年に向かって尋ねる。
「なんでそんなの教えなきゃいけねぇんだよ!?」
「いくつだ?」
京太郎は少年の真ん前に立ちはだかり、目を合わせてもう一度尋ねた。
少年はちっと舌打ちすると、
「14だよ!」
と吐き捨てるように言った。
京太郎はその瞬間少年の腕を掴む。
「来い!」
「くっそ!何すんだよ!離せくそが!」
京太郎が腕の力を弱める事はなかった。
「14歳の君はすでに法に裁かれる年齢だ。交番で事情聴取を受けてもらう。」
その時、京太郎の腹にドスンと言う衝撃が走った。まさか、京太郎に全力でタックルしてきたのは、先ほどまで地面にうずくまっていた被害者の少年だった。
完全に不意を疲れた京太郎は少年の腕を離してしまう。
その瞬間、暴行を加えていた3人の少年は一目散に逃げていった。
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