Case2 お金持ちを夢見る男子中学生の話 2
結局、京太郎は幸田に連れられてクレープ屋の列に並んだ。それにしてもクレープ屋に並ぶのはほんとに女性ばかりだ。
「どれにしよっかな〜。」
幸田はショーケースに並べられたクレープを見てはしゃいでいる。
やれやれ、ここまで来たらしょうがないか。
お嬢様は楽しそうにしてるし。京太郎は幸田の横顔を見てそう思った。
「いちごは外せないなぁ。でもチョコアイスもありだなぁ。京ちゃんどれにするか決めた?」
「キウイですかね。」
「そこいくんだ!?」
幸田が驚いて声を上げる。
「ダメですか?」
「いや、京ちゃんキウイ好きだったんだぁと思って」
幸田が間近で自分の顔を眺めるので、京太郎は顔を逸らす。
「まぁ、好きですよ」
「そうだったんだ!じゃあ今度は一緒にキウイフルーツ狩りいこ!」
ん?なんだ、キウイフルーツ狩りって?
京太郎は内心疑問に思いながらも、まぁ都合が合えば、と返事をした。
京太郎と幸田は店員からクレープを受け取ると礼を言い、フードコートの席について2人で食べた。
京太郎は包み紙をペリペリめくりながら、幸田が幸せそうにクレープをほうばるのを見ていた。鼻にクリーム付いてるなぁ。
その時だった。フードコートの奥の席に向かい合って座る二人組が目に入った。
1人はロン毛の茶髪で、図体が大きく、白い縁のメガネをかけており、柄物のシャツを着ている。もう1人は手前にいるので顔が見えなかったが、黒髪でかなり小柄だ。おそらく、中学生ぐらいなんじゃないか?
人がたくさんいる中でその2人が京太郎の視界に入ったのは、明らかにその2人の組み合わせが異常なものだったからだ。あの2人は友達とか兄弟とかそういったものではないと思う。
しかし、大柄な男はもう1人の男を恐喝している風には見えなかった。
ただ2人で話しているという感じだったが、そこには明らかな立場の差があった。
2人の会話の内容は距離が遠かったし、周りの会話がうるさいのもあって聞き取れなかったが、京太郎は大柄な男の唇の動きから発している言葉を予測した。
カネ ガ アレバ シアワセ ニ ナレル
「京ちゃんどうしたの?」
不意に幸田に話しかけられて、京太郎はハッとする。
「いや、何でもないです。」
「ふーん、なんか怖い顔してたから」
「‥‥クリーム鼻に付いてますよ。」
「え?うそ?」
焦って自分の鼻を触る幸田。京太郎はなんだか自分の方が恥ずかしくなってきて、
「まったく‥」
とつぶやいて顔を逸らした。
ただの自分の杞憂かもしれないな。
京太郎はそうも思ったが、「金があれば幸せになれる」と言う言葉は彼の胸の辺りにモヤモヤしたものを残した。
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