Case3 お金持ちを夢見る男子中学生の話3
「幸田さん!ああ麗しき幸田さん!貴方の星野がぁ!回覧を届けに来ました!」
「うん、ありがと星野さん」
朝からやかましいやつだなぁ、と京太郎が思っていると、気持ちが伝わったのか星野健は京太郎を睨んだ。
「なんだ森山京太郎。何か文句でもあるのか?」
「いや、別に‥」
「まったく、貴様のような奴が麗しの幸田さんの警護役とは、ああなんたる不遜な!」
まぁ、警護というよりお守りなんだけどな、と京太郎が思う。
「星野さん、最近詐欺が流行ってるの?」
幸田が回覧を見て星野に尋ねる。
「その通りです!幸田さん!この街に、悪しき詐欺集団が勢力を拡大しつつあるのです!
しかし、この星野の手に掛かれば詐欺集団など恐るに足らず!必ずやこの私が!検挙してみせましょう!」
星野が大胆な身振り手振りをつかいながら幸田に向かって言う。
「詐欺集団?1人じゃないんだな?」
「黙れ!森山京太郎!」
なんでだよ。
「そう、貴様の言う通り犯人は複数名で犯行に及んでいる確率が高い。」
「なんで分かるの?」
幸田が星野に尋ねる。
「昨日ちょうど被害者と思われる女性の事情聴取を受けたのです。それがまた非常に巧妙な手口でして。まず、被害者は詐欺師から身に覚えのない請求と、指定場所に現金を持ってくるようにとの指令を受けたそうです。それも被害者が電話を無視しているとその日のうちに何度もかかってきたそうです。」
「悪質だな。だけどそれだったら1人でも出来そうだな。」
と京太郎が言う。
「まぁな。だがもっと悪質なのはここからだ。
その後被害者には警察を名乗る男から電話が掛かってきたそうだ。そして警察は、さっき詐欺師から電話がなかったか、と問うんだな。被害者女性は当然、助けを求める。」
「だが、その警察も詐欺グループの一味って事か。」
「ふん。察しがいいな森山京太郎。その通りだ。警察に扮した詐欺グループの一味は被害者に、詐欺師を捕まえるために協力をして欲しいと言うんだ。善良な市民はそこで同意してしまう。すると警察が詐欺グループを捕まえるために犯人の要求を一旦飲むように指示を出す。被害者女性によると、地下鉄のコインロッカーに現金100万円を置いたそうだ。だが、その後犯人も警察も金とともに消えた。
もちろん警察がそのような方法で詐欺集団を捕まえる事はありえない。」
「ひどい話だ。」
幸田が回覧板を見ながら呟く。
「犯人の足取りは掴めそうなのか?」
と京太郎。
「もちろんだ、と言いたいところだがこれまた巧妙に逃げてやがるんだよな。全然しっぽが掴めない。」
星野のその言葉に京太郎はそうか、と言った。
詐欺か。お金が絡む事で言えば先日の二人組。
金があれば幸せになれる、と言っていたあの男。何か関係あるのだろうか。
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