便利!!【自動〇〇】シリーズ



「………よし、こんなもんかな」


「何かしてたようだが、終わったのか?」


「えぇ。ちょっとここの【地図化マッピング】を…」


「んん?まったく動いてないのに【地図化】?おいおいマクス君、冗談もほどほどにしておけよ?」


いや、本当に終わったんだけどなぁ?

全階層分…

時間にして約2、30分ってところかな?

現在地は99階層の大部屋で、この先に98階層へ向かう長めの階段があるようなんだけど、ジョエルさんは俺が集中していたのを見ていただけで、俺が何をしていたのかまでは分からなかったようだ。

といっても、それだけで分かるわけもないのだから仕方ないんだけどね。

そもそもが俺がどんなスキルを使えるのかも教えてないし、教えるつもりもさらさらないんだが…


「とりあえずはここから地上に戻りましょうか。上手くいけばたぶん半日くらいで地上に戻れそうだし」


「いやいや、ここはあの【シャドウケイブ】だろう?上層の魔物ですら我々にとって災害クラスの魔物が蔓延っている場所だぞ!?どうやって半日で戻るというんだ!?」


「え?そんな強い魔物なんていないんだけど?」


「え?」


「え?」


………


OK、少し落ち着こうか。


どうやら俺とジョエルさんでは認識が全く違うらしい。


スキルを使って探索した結果だけ言えば、道中徘徊している魔物は俺にとってははるか格下であると【解析アナライズ】は示していた。

だが、ギルド支部長であるジョエルさんや一般と言えばいいのかは分からないが、彼らにとってここの魔物達は脅威でしかないらしい。


う〜む…

どうしたものか…


まぁ考えるのも面倒だし、それよりも時間が勿体無い。


「もう説明するのも面倒なんで担いでいきますね?」


「な、何…?ちょっ…待て!!」


「待ちません。よっと…」


おもむろにジョエルさんを肩に担ぐと暴れ出したのだが、俺の膂力から抜け出す事は出来ない。


(道中倒した魔物の素材を集めるのも面倒だからスキル使っとくか)


物はついでなので狩った魔物は回収して行こうと思い、俺は無言でスキルを発動する。


(【無限収納】、【自動回収】、【自動解体】、【自動整頓】発動っと)


スキル【無限収納】


このスキルは便利なのであらかじめ【創造】しておいたものだが、容量を気にする事なく保存しておけるアイテムボックスのようなものだ。

世の中にはアイテムボックスと呼ばれるものが存在しており、冒険者には欠かせない魔法具である。

物によって積載容量の違いはあるが、手に入れた素材や料理、はたまた魔物の遺体まで収納して持ち運べる便利グッズだ。

ちなみに俺の【無限収納】は亜空間に突っ込んでいるため容量の上限は無く、おまけに中に入れた物の時間経過がされなくなるので、例えば作りたての料理を入れておき、しばらく時間をおいてから取り出しても出来立ての料理が食べられるといった感じだ。

ただしなぜか生き物は収納する事が出来ないため、生きたまま魔物を捕獲したりなどは出来ない。

魔物の遺体などは大丈夫なようだけど…


続いて【自動〇〇】シリーズ


今回発動したのは【回収】、【解体】、【整頓】だ。

これらのスキルは後々地上に帰る事を考えて【創造】しておいたものだったが、思いの外早く使うことになったな。

この三つのスキルは文字通り、自動的にあれこれしてくれる便利スキルで、【無限収納】に機能をリンクさせておくと物凄く役立つ。

普通、魔物を倒したら冒険者はその魔物を解体して素材を確保するが、俺は冒険者ではないので解体なんて無理だしやり方も分からない。

面倒臭いというのもあって、俺はスキルで全て賄うことを思いついた。

それがこの【自動〇〇】シリーズだ。

では、これを使うとどうなるのか?

チャートとしてはこうなる。


魔物倒す→【自動回収】で【無限収納】に格納→【無限収納】内で【自動解体】→【自動解体】されて分けられた素材を分類毎に【自動整頓】


取り出す時はイメージすればそのアイテムを簡単に取り出す事が出来るし、【自動整頓】されているので、ステータス欄にある【無限収納】欄(【無限収納】を【創造】したら勝手に項目が増えた)を閲覧すれば何が入っているのかは一目瞭然。

我ながら素晴らしい機能を作り上げてしまったものだぜ…

ちなみに無機物なども【自動回収】の対象にしておけば、鉱物なども勝手に採集してくれる。


というわけで準備完了だ。

いまだに暴れているジョエルさんだが、俺の「置いていきますよ?」という一言でようやく大人しくなってくれた。


「じゃあジョエルさん、結構きつくなるかもしれないので腹筋に力入れといてくださいね?」


「わ、分かった…もうどうにでもなれ!!」


「では…行きます!!」


「ごっはぁぁぁぁ!?」


俺が急発進した事で、担がれたままのジョエルさんが変な声をあげた。


だから言ったのに…


まぁいいか。

俺はそのまま猛スピード(のつもりはなかったが)で【シャドウケイブ】を駆け抜ける。

もちろん道中の魔物を一撃で葬りながら。


どうでもいいけど…


ジョエルさん



吐かないでね?

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