逆走開始
【シャドウケイブ 第??層】
少し長めの廊下を抜けると、そこにはかなり広い広間が待ち受けていた。
そこに足を踏み入れるや否や、頭上から何かが降って来た。
『お前は何者だ?何故ーー』
「うるさい」
降って来た何かが喋りながら俺を踏みつけようとして来たので、とりあえずそいつを片手で受け止めて押し返して浮かび上がらせ、俺は追随する様に跳び上がり身体を捻ってそのままそいつに回し蹴りを食らわせてみた。
するとなんということでしょう。
大して力を入れたつもりはなかったのですが、そいつは広間の壁に激突してしまったではありませんか。
あぁきっとあれだ。
衝撃を無くすために当たると同時に自分から壁に向かって飛んだんでしょうね。
俺もダリアとの組手の時によくやったものだ。
そうでもしないと俺の身体なんて文字通り弾け飛んじゃったからなぁ…
アレは痛かった…
なんて事を考えながら、一人で納得して頷いていたんだけど、どうも蹴り飛ばしたやつの様子がおかしい。
というか動かない。
自分から吹っ飛んでおきながら気絶するとか大袈裟じゃないかなぁ?
「お〜い、いきなり襲いかかってくるとかお前なんなんだ?」
『………』
返事が無い。
ビクンビクンって反応をしているのを見るに死んでいるわけでは無い様だけど…
「…………」
後ろを振り向くと、遅れてやって来たジョエルさんがこの光景を眺めていたんだけど、その表情は驚愕に染まった様に大口を開けていたかと思うと激しく首を振って我に返ったところだった。
「マクスウェル…その化け物はなんなんだ?」
「いや、俺が知りたいくらいですけどね。いきなり踏み付けようとして来たんで押し返して蹴っただけなんですが…」
あまりの呆気なさに頬をぽりぽりしていると、ジョエルさんは何かを諦めたかの様に項垂れてしまった。
まったく…訳がわからないよ。
まぁそれはさておき…
いきなりでビックリはしたものの、ここは下調べをするのに丁度良い場所とも言える。
壁際でピクピクしているデカブツも今は大人しくなってるし、これで落ち着いてこれから先の事を考えられる。
今の最終目標としてはエリー姉の安全確保が挙げられる。
そのためにはあの屑領主を片付けるのが手っ取り早いだろう。
では次にその目標を達成するための手順を考えよう。
まずは俺が置かれている状況についてだが、ここは【シャドウケイブ】のほぼ最下層と言って良い場所に当たる。
つまりはこの【シャドウケイブ】を抜け出すのが第一条件になる訳だな。
次の目標はエリー姉の安否確認だ。
とは言っても、現状この場所にエリー姉の最終防壁となる父親のジョエルさんがいる事を念頭に置いて考えると、エリー姉の身の安全は保障出来るものじゃない。
今この瞬間でさえも連れ去られていてもおかしくはない状況とも言える。
最悪の事態を想定しておくとするのなら、それはエリー姉が……
いや、そうならないようにするためにもまずは一刻も早くこの【シャドウケイブ】を抜けなければならない。
最初で最大の難所とも言えるのが今の状況っていうのは何なんだろうね?
つくづく自分の運の無さに辟易しちゃうよ…
とはいえ、いつまでものんびりとはしてられない。
ある程度の段取りを考え終えた俺は早速行動に移すことにした。
「【千里眼】、【
スキル【千里眼】
このスキルは元々は【遠視】というスキルから派生した上位スキルだ。
【遠視】→【
【遠視】はより遠くの物が見えるようになり、【鷹目】は【遠視】の効果と合わせてさらに俯瞰して見えるようになるスキルだ。
そのさらに上位スキルに当たる【千里眼】は自分の魔力を利用して、その場にいながら先々の様子を見る事が出来る。
それはフロアを跨いでも有効であり、それで見えた場所は移動していないにも関わらず、まるでその場所にいるかのような感覚だ。
そしてスキル【
これもまた上位スキルで元の基礎になるスキルは【鑑定】である。
【鑑定】→【審美眼】→【解析】の順に効果が上がっていき、【鑑定】では対象の名称や簡易なステータスが数値化して見える。(ただし隠蔽された物までは見抜けない)
【審美眼】に効果が上がると、対象の名称など【鑑定】で知り得た事柄の他に、例えば対象が調度品であった場合、その物の価値や売却価格、製作者などの名称といったさらに詳しい情報を得る事が出来る。
余談ではあるが、この【審美眼】と【看破】というスキルを組み合わせることにより、隠蔽されたステータスもある程度見破ることが可能だ。
そして上位スキル【
ここまでの説明で分かる通り、下位スキルの【鑑定】、【審美眼】の効果をさらに高めたスキルがこれだ。
その内容はステータスの数値の詳細化や人物に対して使えばその者の出自や経歴、称号、二つ名等、割とどうでもいい内容までもを見破る事が出来る。
先述の【看破】と合わせれば隠蔽された内容はほぼ全てが丸裸にされるスキルだ。
とは言ってもこの【解析】は万能というわけではない。
相手方と自分との実力差が相手の方がかけ離れて上の相手だった場合、相手のステータスは文字化けを起こしたかのように表記されて確認する事が出来ない。
というのも、スキルを取得してダリア相手に見破ろうとしたら呆気なく失敗に終わったのだ。
自分よりも強い相手には効かないって事の証明だったよね。
俺自身結構強くなったなぁとは思っていたけど、それでも見破れなかったダリア。
マジ鬼畜、マジ化け物だな…
最後にスキル【
このスキルの基本である【
【地図化】は自分のいる半径100メートル周辺の地形を地図として見えるように出来るスキルで、冒険者にとってはかけがえのないスキルになるらしい。
このスキルがあるのと無いのでは生存率が段違いになるとか…
実際、道に迷ったとしても斥候職がこのスキルを利用して地図に書き起こしたりしておいたお陰で踏破攻略する事が出来たダンジョンは多いらしい。
その上位スキルである【
【地図化】では周囲しか感知出来ないのに比べ、この【自動地図化】は歩く度に周りの地形が自動で記憶、把握出来るようになるのだ。
簡単に例えるのなら、歩いても歩いても周囲の霧が晴れる事がないのが【地図化】、歩けば歩くほど周囲の霧が晴れて最後には全てがクリアに見えるようになるのが【自動地図化】といったところだろう。
説明が長引いたけど、俺はこの3つのスキルを併用する事で、この【シャドウケイブ】を攻略する事にしたのだ。
【千里眼】による先の道と様子の確認、それと同時に行われる【解析】による階層やそこに存在している魔物の情報入手。
オマケの【自動地図化】によるフロアの形状記憶によって、俺は移動する事なく、この【シャドウケイブ】を丸裸にしていったのだった。
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