下衆の極み



【領主館 B2階】



ここは領主館にある地下。

倉庫も兼ねている一室のさらに奥、金庫の中に領主しか開けられない地下への階段の入り口があった。


領主ロドリゲスは護衛を金庫入り口に立たせると、一人金庫の中、その奥の地下入り口に立つ。


「ぐふふ…今日はどういった趣向で楽しもうか…」


下卑た嗤いを浮かべながら地下へと降りると、そこには重厚な鋼で作られた扉があった。

ロドリゲスはその扉を押し開けると、目の前には目を背けたくなるような光景が広がっていた。


一言で表すのであればその部屋は『拷問部屋』である。

かなりの面積を持つその部屋ではあるが、そこにある拷問器具の数々が部屋の広さを狭く感じさせる。


ロドリゲスがとある拷問器具の前に立ち嗜虐的な笑みを浮かべながら舌舐めずりして見下ろす。

そこに横たわっていたのは無惨に衣服を引き裂かれ、両手両足を荒縄で縛られ猿轡されている女性がいた。

荒縄はその拷問器具の上下にある回転器具のような物の四隅にそれぞれ繋がれていた。


「ふぅっ…ふぅぅぅっ!?」


女性の表情が恐怖に歪む。


「ははは…待たせたか?なぁに、心配せずともこれからたっぷり可愛がってやるぞ?」


ロドリゲスは上にある回転器具に手を掛けゆっくりと回し始める。

すると回転に合わせて繋がれていた荒縄が徐々に締まっていくのと同時に女性の両手が引っ張られていく。

ある程度ロドリゲスが回転を進めていくと、身体が伸ばされる限界まで達した荒縄から抵抗が生まれ、回すロドリゲスもさらに力を加えて回し続けていると…


「あぁ…あぁ…ああああああぁぁっぁぁぁがっぁぁぁぁ!!」


女性の悲痛な叫び声が室内に響く。

それと同時に女性の肩を始めとする手首までの関節がゴキンと嫌な音を立てて関節が外された。


「くふっ!いいぞいいぞぉ?それっ!もっとだ!もっとお前の叫び声を私に聴かせろぉ!!」


さらに回す速度を速めるロドリゲス。

やがてブチッ、ブチッと女性の腕から筋繊維が千切れる音が響き始める。


「あああああああっ!!」


女性はその顔面を苦痛と涙で埋め尽くしながらひたすらに続く恐怖に耐えることしか出来ない。

その表情を見てどんどん興奮していくロドリゲスは移動すると、今度はこちらとばかりに下部に位置する回転器具を回し始める。


「ひひっ!ひひひゃははは!!」


狂気に包まれたロドリゲスを止める者はそこには誰もいない…

取っ手を回し続けるロドリゲスは女性の身体が壊れていく音が響く度に自分の下腹部を膨らませていた…



「ひゃはっ!!ヒャハハハハハ!!」




ロドリゲスが地下の金庫から出て来たのはその日の夜遅くのことだった。


「おい。下への鍵は開けてある。中のモノを片付けておけ」


「かしこまりました…」


護衛からの返事を待つまでもなく、ロドリゲスは自室に向かって歩いていく。

それを見届けた護衛は領主の指示通り階下へ向かい扉を開ける。


護衛の男は目を見開き絶句した。

そして…


「うぐっ……おぇ……」


嘔吐した…

そこに広がっていた光景はまさに地獄と言っても過言ではなかった。


「惨い…奴は悪魔か…なぜここまで出来るのだ…」


彼の目の前には使用されたの断首台。

繋がれていたのは、生まれたままの姿で無理矢理引き千切られた様に四肢と頭を失った無数のミミズ腫れを身に纏った乱暴された後の胴体が横たわっていた。


護衛の男がその光景に思わず後ずさると、彼の足に何かが当たる。

それは……


「あっ…あぁ……すまない…すまないすまないすまない…」


間違いない。

この胴体の持ち主だ。

その表情は苦悶の表情で埋め尽くされていた。

光彩を失い全てを諦めた様なその両眼はこれでもかというほどに見開かれ血の涙の跡が残っている。

そんな物言えなくなった『彼女』と目が合ってしまった護衛が出来たのは、ただただ謝罪を述べることだけであった…



【領主館 領主寝室】



バスローブを纏い豪華なソファーに身を預け、ワイングラスを傾けて血の様に赤いワインを眺めている男がいた。


「グフフ…グハハハ…」


先程の情事を思い出しているのか、下卑た嗤いを浮かべながら独り言を呟く。


「邪魔者はもはや始末した…次はお前だ小娘……この私を虚仮こけにした報い、必ず受けさせてやる……」


狂気の瞳に彩られたロドリゲスが口角を吊り上げながら次の標的の名を口にする。



「待っていろ……エリィィィィィ!!」


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