暗黒龍との出会い
【
「ぐ…うぅ…」
また戻って来てしまったようだ。
相変わらずの全身の激痛と真っ暗闇の何も見えないこの世界。
さっきのはやはり夢だったのだろうか?
気絶する前と大して状況が好転しているわけでも身体が回復しているわけでも無い。
むしろ悪化しているようにすら思える。
というのも、神経が過敏になっているためなのか、俺の近くに何かがいるように感じるのだ。
何かの気配とでも言えば良いだろうか?
こんな感覚は今までなかった事であったが、人間死に瀕しているとこういった感覚が花開くのだろうか?
気配と同時に爬虫類特有の生臭い匂いも感じ取れるのだ。
「だ…れか…いるの…か……?」
『ほぅ…まだ生きておったか。人間の様だが血の匂いが甚だしい…やはり死にかけか』
「お前は…」
『これから死にゆく者に名を教えた所で何になる?まぁそうさな…お前達人間から言わせれば
「っ!?…ぐぁっ…ははっ…何だ…やっぱり…喰いに来たってことかよ…」
『喰う?お前ら人間をか?喰ったところで腹の足しにもならんわ。そもそも我は食事を必要とせぬからな』
「なん…だ…と…!?じゃ、じゃあ、今までここに落とされてた人間は…?」
『む?あぁ…そういえば何十年かに一度、生き絶えた人間が放り込まれて来ていたのぅ。他の魔物に喰われて骨すら残ってはおらんがな』
なんて事だ…
暗黒龍の言うことが事実なら、俺を含めた今までの生贄に捧げられていた人達はみんな…
『まぁ無駄死にだのぅ』
「っ!!」
聞きたく無かった現実を暗黒龍が言い放つ。
だがそれは紛れも無い事実となって俺に襲いかかる。
「く…そ……」
骨折り損のくたびれ儲けとは正にこの事だ。
言葉通りに俺の全身は骨折しており所々で出血している有様だ。
あまつさえ目隠し、全身を袋で包まれている状態だ。
俺が悔しさを滲み出しているのを見ている暗黒龍は、何を思ったのかこう口にした。
『小僧よ、お主に生きる気力はあるか?またはその状態から生き長らえる術はあるか?』
生きる気力?
生き長らえる術?
生きる気力と言うよりも街の連中に復讐したいって気持ちはあるな。
この復讐心が生きる原動力とするならそれは質問の答えにもなるだろう。
生き長らえる術にも一応の心当たりはある。
まだ確認出来てはいないが、俺には更新されたスキルがある。
【スキル創造】
これさえあればなんでも出来るはずなのだ。
よって俺が答えたのこうだ。
「ある」
『ほぅ…?その身体で生き残る術もあると申すか…くくっ…面白い…』
まぁ人間なんてドラゴン達から見たら取るに足らない矮小な存在なんだろうが、こちとらそれでも懸命に生きようとする種族だからな。
一人一人思惑なんて違うのが当たり前の存在だ。
俺みたいなのがいてもおかしくは無いはずだ。
だが暗黒龍は俺を面白いと言う。
「どういうことだ…?」
『動機は何であれお主は我に気概を示した。ならば我もそれに応えようということだ』
暗黒龍は言うやいなや、俺を縛りつけていた袋やロープを器用に切り裂き、俺は自由に動ける状態になった。
とは言っても、全身骨折や裂傷、出血などの重体なのは変わらない。
「ぐぁっ!?」
拘束から解放された弾みで骨折している部分に刺激が加わり悶絶する俺。
痛みに耐えながら何とか顔を横に向けるとそこには暗黒龍がギラついた眼で俺を見ていた。
『そこからどう生き長らえるのか、他の魔物には邪魔はさせぬ。我にその術見せてみよ!』
暗黒龍、実はいい奴なんじゃないか?
不遜な態度は取っているが、やった事は俺への手助けだ。
「ありがとう…」
俺がニッと笑いながらお礼を言うと
『別に助けたわけではない。お主がここからどう生き長らえるのか見物したかっただけのことよ』
と言って、恥ずかしそうに俺から視線をズラした。
あぁこれ…
素直じゃないって言うよりも…
アレだ。
ツンデレって奴だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます