スキル再取得



『この度は本当に申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!』


なんか謝って来てるんだが…

どういうことかな?

まさかとは思うが、もしかして俺が生まれた時に授けるスキルを間違っていた〜なぁんて…


『っ!?……も、申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!』



おい…

マジかよ…


すると俺の今までの人生ってこの創世の駄女神のせいで狂わされてたって事なのか?


『だ、駄女神!?』


五月蝿い黙れ


『ひぃっ!?』


おっといけない。

つい怨念染みたドスの効いた怨嗟の声をあげてしまった。

落ち着け俺。

冷静になれ…


………


『………』


なれませんでした。


おいふざけんなよこの駄女神がぁぁぁぁぁぁ!?


『ひぃぃぃぃぃ!!』


17年!!

俺の人生たったの17年で終わりかよ!?

しかも生まれてからずっと何一つ良いこともなくこんな役立たずな死にスキルのせいでイジメられるわ死にかけるわ終いにゃ生贄にされて終わりだと!?

しかもスキルの原因がお前の凡ミスだと!?


マジでふざけんなぁぁぁぁぁ!!


『お、お怒りはごもっともですぅぅぅぅぅぅ!!』


やかましいわ!!


それで?

そのスキルを司ってる駄女神のステイシア様が今更俺に何の用があるってんだ?

そもそも凡ミスが原因って何なんだ?


『そ、それはですね…生命が誕生する時にスキルを選定して魂に書き込むのが私の仕事の一つにありまして、その際にちょっとした変換ミスといいますか…何といいますか…ごにょごにょ…』


つまりは変換ミスをしたままスキルを書き込まれて世に送り出されたのが俺だったということか?


『そ、そうなりますねぇ〜あはは〜』


あ?


『ゴメンナサイ』


まったく…とんだ貧乏くじを引かされたもんだ。

しかし、こんなくだらない理由があったと分かってしまっては死を受け入れてはいたもののやるせない気持ちの方が強くなって来た。

このままでは流石に死んでも死にきれない。


この怨み晴らさでおくべきか…


『い、いやいや!?流石に私だってこのままでいいなんて思ってはいませんよ!?それにこのままあなたを死なせてしまったらとんでもない怨霊が生まれて世界に厄災を齎しそうですし!』


一言多くね?

なんか一言多いんじゃね?


『だ、だって…あなたの今の負のエネルギーが尋常じゃ無いんですもの…』


誰のせいだと思ってんだよ!?

内容はちょっと聞き流せるもんでは無いが話が進まないのでまぁ聞き流すとして…

改めて聞こう。

今更俺に何の用なんだ?


『え〜っと、今までは制限があって現界に干渉することが出来なかったのですが、あなたが死にかけている事で私がようやく干渉する事が出来るようになったんですね?』


うむ


『それで、誤変換で与えてしまったスキルを再変換して本来与えられるべきだったスキルに直してあげようと…』


直してあげよう?


『な、直させてくださいお願いします…』


ただ直すだけなのか〜

へぇ〜


『も、もちろんただ直すだけじゃなく特典も付与してあげても良い…』


付与してあげても良い?


『ふ、付与させて頂きます…』


ん?


『ふ、付与させてください…』


ふむ…


『も、もうこれ以上は勘弁して下さい!!』


これ以上はなんか泣きそうだったのでそろそろ勘弁してやろう。


(ホントに何なのよコイツ!?スキル無しで放り出してやろうかしら!?)


あぁ?

なんか変な事考えてるんじゃ無いだろうな?


『っ!?そ、そんな事ないですのことよ!?』


明らかに動揺してるじゃないか。

ヒューヒューと吹けもしない感じの口笛が聞こえて来ている所を察するに、やはり何かを企んでいたのだろうがそうは行かないぞ。

ここは一気に攻め立てる!


それで、俺が本来授かるはずだったスキルってなんてスキルなんだ?


『スキルです』


それじゃ今までと変わらないんじゃないか?


『とんでもない!聞こえは確かに同じに聞こえますがまったくの別物です!文字に表すとこうですよ!』


駄女神が何やら操作する音が聞こえた気がする。

すると、俺の目の前に文字が浮かび上がって来た。

そこにはこう書かれてあった。


【スキル創造】


おいおい…

こんなとんでもないスキルなんてあったのか…


『あったんですよ』


マジで?


『マジです』


冗談だろ?


『本当ですよ』


…夢じゃないの?


『まぁ今は精神体であるので夢うつつと思っても仕方ないとは思いますが、確定事項ですよ』


コレが本来のスキル…

でもコレってレアスキルなんじゃないのか?


『レアなんてもんじゃないですよ!?このスキル一つあれば勇者にも賢者にも大商人、はたまた魔王にだってなれちゃう超絶稀少スキルですよ!!』


いや、どれにもなるつもりはないんだけどさ。


『ないんかい!?』


まぁ凄いのは分かったがそれよりも気になるのは付与特典だな。

創世の女神様はいったいどんな豪華特典を用意してくれるのか。

俺にとってはこの【スキル創造】も大概だが特典の方が重要だ。


『な、なんて浅ましい…ま、まぁ良いでしょう。ともかくあなたのような人間には過ぎたるスキルではありますが、このスキルを再登録します。感謝なさい?』


ステイシアが言い終わると、空中に書かれていた【スキル創造】という文字が俺の胸の中に吸い込まれて消える。

それにしても、なんか急に偉そうに振る舞ってるなぁこの凡ミスポンコツ駄女神…


『だ、誰が凡ミスポンコツ駄女神ですか!?』


今目の前にいるのは誰だろうね?


『ぐぬぬぬ…』


それより特典は?


『そんな事言いましたっけ?』


【スキル創造】って何でも作れるんだろうか?

例えば他の神様と話したり出来るスキルとか…


『大変申し訳ありません…』


やれやれ、俺はただ気になって確認しようと思ってただけなんだがなぁ?

急に謝られても何に対して謝っているのかなぁ?

俺には皆目見当がつかないぜ。


『あ、あなた様には今回、多大なるご迷惑をおかけしたお詫びとしてこちらを進呈させて頂きたく思います…』


お、おう…

えらいへりくだった物言いに俺とした事がちょっと身構えてしまった…

だがしかし、今立場的に有利なのは俺なのだ。

このまま不遜な態度を貫き通す!

心にそう決めた俺は新たに書き出された内容に目を通す。



・【スキル想像】と【スキル創造】の相互リンク

・300スキルポイント付与

・現状のステータスの上限アップ



『こ、こんな感じでいかがでしょうか…?』


こ、これはまたとんでもない特典が舞い込んで来たもんだ…

正直言って…


ドン引きだ


『何でよ!?』


いやいや、だって俺、ただの17歳の少年だぜ?

もっとこう即物的なお金とか幸運とかそういうものだと思ってたわけで…

つまりは俺の手に余るものばかりなのだ。

スキルポイントとかステータスの上限アップなんて貰っても別に俺は冒険者じゃないし、

そもそもスキル自体使えるスキルでは無い。

スキルの相互リンクなんてはっきり言って意味不明だ。


『あ、それはですねーーー』


相互リンクについて嬉々として説明をし始める駄女神ステイシア。

俺が話半分に聞いているのを察すると、『聞いているのですか!?』と怒り出す始末である…



そんなこんなで話を無理矢理聞かされる事およそ30分ほど。

俺の精神体が足下から薄く消えかかって来た。

アレ?コレなんかヤバいんじゃね?

このままだと俺、天に召されちゃうんじゃね?

などと思っていると、この状態に気付いたステイシアが慌てていた。


『このままだとあなたが死んでしまいます!!早く戻って!!』


今まで散々話をしていたのは誰だよ!?

悪態をつこうとしたものの、何か見えない力によって俺の意識が遠のいて…いや、自分の身体に戻ろうとしている感覚に襲われる。


『身体に無事戻ったら【ステータス】と呟くのですよ〜〜〜………』


駄女神の最後の叫び声がフェードアウトした所で、俺の精神体での意識は完全に途絶えるのだった。

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