プロローグ2



『まだ逝っちゃダメェェェェ!!』



突然頭の中に響く声。

それは酷く焦った様子の女性の声であった。

しかしまだ逝っちゃダメと言われても、俺としては来世にワンチャンと思っているわけで…


『来世にワンチャンとか諦めないで!!』


おおぅ…


何故かは知らないが、どうやらこの女性には俺が思った心の声が聞こえているらしい。

ふむ…


実に鬱陶しいな!


『鬱陶しいとか言わないで!!』


おっと…

ついつい思った事が心の声として溢れ出してしまったようだ。

抗議の声は若干泣きそうな声で聞こえた。

まぁ悪気があったわけじゃないからそんな泣きそうな声を出さないで欲しい。

とりあえず鬱陶しいのでさっさと用件があるのなら伝えて欲しいところだなぁと思っていると、律儀というかなんと言うか、コレも拾っていた様で文句が聞こえてきた。


『何なのコイツ!?この私がわざわざ出向いてきてやっていると言うのにこの態度!!信じらんない!!』


この私とか言われてもなぁ?

こっちとしてはそもそもアンタは何なんだって話なわけで…

もっとも俺としてはそんな事はどうでも良いので早いとここの茶番を終わらせて生涯を終えてしまいたいのだが。


『何でそんなに死にたがるのよ!?普通もっと生きたかったとか思うもんじゃないの!?』


他の人の事は知らん。

俺は現状を見て運命を受け入れてるだけだ。

だいたいこの状況で生き延びたとしてもまた苦痛を味わうだけじゃないか。

俺はそんな苦痛を味わって喜ぶような性癖は持ち合わせていない。

こっちは死を受け入れてるんだから正直邪魔しているのはアンタなんじゃなかろうか?


『またアンタって言った!またアンタって言った!!』


大事な事なので2回言いました?


『違う!!』


もう何なのコイツ?

ホントめんどくさいな

さっさとしてくんないかな?

こっちは色々と予定があるんだけど


『死にかけてる人間が何で色々と予定が入ってるのよ!?』


失礼な…

色々あるだろ?

死んだと思って目を閉じて、起きてみたらそこが異世界だったりとか、あるいは思いっきり過去に飛んで歴史に名を残す様な第2の人生を歩んでみたりとかさ。


『そんなのあるわけないじゃない。アンタ馬鹿なの?何夢見ちゃってるの?ぷーくすくす』


よし良いだろう。

用はないって事で俺はそろそろ寿命を終えようじゃないか。

たぶんこのまま寝る感じで良いんだよな?


『ちょ、ちょっと待ちなさい!待ってってば!?待ってくださいお願いします!!』


俺が考えを切り替えるとやたらと焦った様子の女性は姿は見えないが、声の感じから察するに本気で頼み込んでいる様子だ。


『このままあなたを逝かせたら私の凡ミスが神界中に知れ渡っちゃ…あ…』


ほほぉ…凡ミスとな?

と言うか今神界って言ったか?

って事はこの女性は女神、またはそれに準ずる眷属ってところだろうか?


『そ、そ、そうよ!私は創世の女神ステイシア!アンタの世界じゃ知らぬ者のいない偉い神様よ!』


凡ミス…


『うぐぅぅぅ!?』


要するに、創世の女神(笑)である偉い(爆笑)一柱のステイシア様がわざわざ死ぬ間際の矮小な存在であるこの俺に、やんごとなき理由があって声を掛けて来たと?


『(笑)とか言うな!!アンタ絶対性格悪いでしょ!?』


そりゃ子供の頃から陰湿なイジメにあってりゃ性格だってひん曲がるし精神だって歪みもするだろう。

死ぬかと思ったことなど数え切れんわ。


『そのイジメられた理由って…』


生まれ持ったクズスキル、いや…

何の利用価値も見出せないあるだけで世間からも親からも必要とされない完全無欠の死にスキルである『想像』を授かってしまったからだろうな


『う、うぐ…うぅぅぅ…』


ん?

なんか駄女神の様子がおかしいな?

たしかスキルは生まれつきのもので、どんなスキルを授かって生まれるかは神の采配によるものなんて言われてたはずだが…


まさか…


『この度は本当に申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!』



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る