交換留学編
第56話 交換留学
俺とマモンが邪神を討伐した後、事後処理はケイス王がやってくれた。
魔獣の復活は教皇の仕業であるという事で一件は落ち着いている。
被疑者死亡のまま事件は片づけられた。
余談だが、生贄作戦を実行しようとした騎士団長は、役職を解雇。騎士団も解体、再編成が行われるらしい。
噂だが、攪乱兵という枠組みを消して騎士団を再構成するとのことだ。
討伐に参加した俺たちは多少の褒賞をもらって学園の寮に帰ってきた。
そこからは特に問題もなく学園生活を送っていた。
唯一変わったところといえば、マモンがうちのグループにいることだ。
マモンは、学園に帰るとすぐに黒狼軍の被害者達に謝りに行った。
全員が許してくれたわけじゃないが、心優しい生徒は今後の行動に期待すると言っていた。
マモンは言い訳に邪神を使わなかった。そこは評価すべきだ。
そんな感じで俺のマモンに対する評価は上がったのだった。
現在、俺とマモンは墓地に来ている。
目的は、墓参りだ。
黒狼軍事件の被害者の中には、二人だけだが死亡者が出ている。
ちなみに墓参りは日本式だ。
マモンが、自分の知っている礼儀を尽くす方が誠実だ。という謎の理論を展開した。
「よし、戻ろうか、克己。」
「分かった。」
墓参りを終えたマモンが俺のところにやってくる。
「そういえば克己、交換留学の話はどうするの?」
「どうしようかな。正直悩んでる。」
「理由を聞いても?」
「いや、エリート校のアルザミアでさえ学力はあのざまだ。他の学校行ってもつまんないだろ。」
「まあ、それもそうか。俺たちにとってこの世界の勉強は小学生低学年レベルだからね。しかも、応用とかなんの捻りもない。」
俺の学園への愚痴にマモンは同意する。
洗脳が解けて正常になったマモンは勉強はちゃんとできている。次のテストまでかなり時間があるため正確な点数は分からないが、まあ高得点は取れるだろう。
「別に、ここで事足りることをわざわざ他でやってもなあ…。」
「そこは同意するよ。でも、転生者を探すうえでは行った方がいいんじゃない?」
あ、そうか。転生者は今までの例を見れば、皆同い年ばかりだ。
あれ?そういえば…。
「マモンって何歳で死んだんだ?」
「俺か?18だよ。推薦受験を目指してたけど強盗に遭遇しちゃって…。」
言うまでもなくこいつの死因は知っている。【栄光の英雄】の発動で記憶まで共有したからだ。
「香奈は何をしてるのかな?」
「知ってるのか?あの世界で死んだ高校生の魂がこの世界にあるのを。」
「君と色々なものを共有したんだ。知ってるのは君だけじゃないよ。
まあ、俺は香奈を探すよ。戦いが激化する前に、前の世界では叶わなかったけど、この世界では結婚できるようにさ。」
「まあ、頑張れ。」
話が脱線したが、転生者探しという点で交換留学はかなり使える。どうするか…。
「マモン、交換留学の期間ってどのくらいだ?」
「半年くらいだよ。次のテストくらいに帰ってくることになるね。」
半年か…。交換留学ならそのくらいか…。
その期間、シルとエレナと離れることになる。ウェンディの剣を教える事も出来なくなる。
「もしかして、二人の妻のことで悩んでるのかな?」
「……そうだな。」
否定する理由もないので肯定する。
するとマモンは不機嫌そうに言う。
「そこは、顔を赤くして『バッ、バカ、そんなんじゃねえよ!』って照れるところだろ。」
「いや、漫画の読みすぎだろ。好きなのは事実なんだからバレた所でだろ。」
「そういうところが人と違うんだよなあ。」
「本題に戻らないか?二人をどうするかだろ。」
「いい案がある。」
マモンはそう自信満々に言う。
「クラシス闘学園に交換留学しよう。」
「クライ〇ス帝国?」
「RXの敵組織じゃない。クラシスだ。」
お前、まさか!?
「お前、仮面ラ〇ダー見てたのか!?」
「ああ、俺は昭和から平成までの作品すべてのDVDを持っているぞ!ちなみに好きな作品はドラ〇ブだ!」
「おお、同志だ!やはり三〇陸脚本の作品は神だ!」
「「フハハハハハ!」」
俺たちは人通り笑いあった後、話を戻す。
「何故クラシス闘学園なのかというと、定員がぴったり四人だという事、そして不人気!絶対に枠が空いてる。この学園には勇者がいて相当の武勇じゃないとこの学園は好まれない。」
「要は脳筋ばっか、てことね。」
「そう、勇者パーティーのメンバーという例外はいるものの、基本一般人より鍛えてる人が多い学園だ。」
「なんとなく行きたくないんだけど…。」
「さらにもう一つ!俺の家がそこの近くだ!無償でに宿を提供しよう!」
無償か…。強い奴もいる。という事は設備が整っている。
だったら、半年だけでも戦力の強化が図れる。
「よし、決めた!」
俺は、拳を空に掲げる。
「クラシス闘学園で転生者探しだ!」
その掛け声にマモンは敬礼に似たポーズをとる。
「了解!」
俺たちの交換留学が決まった。
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