第54話 十一
俺は罪を犯した。
俺を導いてくれていた神の傀儡にされてたとはいえ、だ。
多くの人を傷つけた。
俺は前世では相当な幸せ者だったと思う。
大金持ちとは言わないが、親の金回りも良く欲しいものは誕生日などの特別な日に必ず買ってもらえた。
空手をやっていた影響で、地元の不良は軒並みシめた。
友達も結構いたし、婚約者とはいえ良好以上の関係を築けた恋人もいた。
高校卒業後、大学を出れば父親の勤めている会社への就職が約束されていた。
まさに、将来安泰の人生。
でも、あの時すべてが壊れた。
あの日、恋人――――香奈と一緒に下校していると強盗に遭遇した。
その認識をした瞬間、隣にいた香奈が倒れた。
撃たれて死んだのだ。
俺は強盗に立ち向かった。
俺の大切な人を奪った相手に一矢報いたかった。
結果、俺も死んだ。
当たり前だろう。相手は銃を持っている。こっちは武術をやっているとはいえ生身だ。勝ち目なんてどこにもなかった。
そして俺は転生した。
転生前に色々言われたが、要約すると戦えと言われた。
この世界に来て、空手を否定された。
この世界では武器無しで戦うのは美しくないとされていて、剣を習わされた。
でも、俺には剣の才能は全くなかった。剣を持つと重心がブレて拳の様にうまく前に出せないのだ。
蔑まれた。家族に、家とつながりのある者達に。
唯一、俺に優しかったのはナナだけだった。
ナナは俺と同時期に生まれたメイドだ。
いつも俺のことを励ましてくれて、慰めてくれた。
でもいつからかその好意をのけ者にするようになった。
俺に関わるだけでいやがらせを受けるのにも関わらず俺を助けてくれた人に対してしてはいけないことをしてしまったのだ。
思えば、そのあたりから俺の思想がおかしくなっていったと思う。
ここから洗脳が始まっていたのかもしれない。
学園に来て、克己に出会った。彼もまた転生者だという。
俺は彼や、彼の友人に酷いことをしかけた。
未遂で終わったが、完全にレイプを犯罪者たちに依頼してしまった。
挙句の果てに、魔獣の封印を解いてしまった。
救いようがない。
責任転嫁をするわけじゃない。でも、
全ての元凶であるデルフィニウムを俺は許さない。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「「開門、第十一獄門」」
「その術はまさか!?貴様ら同調する気か!」
デルフィニウムがなにか言っているが気にしない。
「「『光は世界の道標、光は世界の希望たれ』」」
マモンも洗脳されていた被害者だ。
邪神に向ける怒りは俺と同じだ。
「「
詠唱を終えると、俺単体で発動する獄門術とは違い、金色の光が俺たちを包む。
力が、流れてくる。
今の俺たちは、つながっている。故に俺たちは互いの能力を使用できる。
「いくぞマモン。」
「ああ…。」
心もつながっている俺たちは合図なんていらない。合わせるだけだ。
戦い方もすべて理解した。
いくぞ!
俺は俺の持てる最速でデルフィニウムに突っ込む。
「くっ……だが、私には効かない!」
「んなこたあ、分かってる。」
俺にばっか気をとられてると死ぬぞ?
「てりゃあ!」
「ぐべっ…。」
俺の後ろからマモンが拳を叩き込みデルフィニウムが絶叫する。
おそらく死にはしないが痛みはあるのだろう。
「「畳み掛けるぞ!」」
お互いがお互いに声を掛け合う。
まだまだ行くぞ!
「染式流 桜木舞 奥義 閃本桜!」
「白銀流 痙拳!」
なんか、マモンに流派がある…。
でも、面白そうだ。
俺は閃本桜をやめ、剣をしまう。
「白銀流 痙拳!」
俺もマモンと同じ技で叩きこむ。
凄いぞ、これ。
体幹が続く限り、無限コンボだ!
正拳、裏拳、上段蹴り、様々な技を複合して出す連続技。
二人共が多彩な技を当ててくるので、デルフィニウムは何もできずただタコ殴りにされている。
「くっそ……なぜ反撃できない…。」
「当たり前だろ!」
「俺たちとは」
「「覚悟も、経験も、何もかもが違う!」」
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