第52話 閃本桜

 『なら仕方ありません。私が直々に教えてあげましょう。望むことが何よりも力を得ることを。

 この私、デルフィニウムが。』


 傲慢の邪神デルフィニウム


 華怜の仇の仲間……


 絶対に殺す!


 俺がそんなことを考えている間に教皇がデルフィニウムに話しかける。


 「おお、神よ。私たちに導きを――――」


 『ならば私と共に一つになり、この世界へ定着させてください。』


 「それからどうすればいいのでしょうか?」


 『私と一緒にその背教者たちを裁くのです。神に背いたその者達はこの世に災いをもたらす呪子となるでしょう。』


 「なるほど、神の教えが聞こえない者は皆無能なのですね。では、私たちで裁きを加えましょう!」


 『ではいきます。』


 デルフィニウムがそう言うと、教皇の中に入り込み教皇が発行し始める。


 「マモン、何が起きてるんだ?」


 「わからない。でも、絶対に良くないことが起ころうとしてる。」


 「それは見てたら分かる。」


 会話をしている内に光が収まり始めるが、また新たな光源が生まれたのを俺は見逃さなかった。


 狙いはマモンか!?


 「危ないっ!」


 俺は思わずマモンを抱えて敵の攻撃の射線から出る。


 デルフィニウムの攻撃は俺たちの後ろを通り、爆音を上げて地面をえぐり取った。


 なんだ今の威力は!?


 あんなのをまともにくらったら一発OUTだ。


 俺が凄まじい威力に絶句しているとデルフィニウムがマモンに話しかける。


 「華雪よ。お前は英雄になりたいのではなかったのか?」


 「なりたいさ。僕はあの時に香奈をかばえなかった。

 だから英雄になって二度とあんな思いをしないようにって思った。」


 「なら、私の話の通りに動けば英雄になれたのだぞ。」


 「違う。あんたが俺にやらせてることは人を見下すことだ。そんなのは英雄じゃない!」


 「黙れ!英雄は常に人の上に立っているんだ。見下せるほどの余裕が無ければ英雄にはなれない!」


 「それは違うだろ。」


 俺は我慢できないとばかりに言う。


 「俺の思う英雄はな。敵味方関係なく誰も殺さずに戦いを終わらせるような凄い奴がなるもんだと思うんだよ。」


 「詭弁を。そんな人間がどこにいるというのだ。」


 「ああ、いるわけねえよ。でもなあ少なくともお前の言う人間も英雄としては有り得ない。」


 「黙れ。私が認めればそいつが英雄なのだ。誰が何と言おうとな。」


 支離滅裂だ。暴論だし破綻している。


 会話するだけ無駄か…。


 そう判断し、俺は目を開いた。


 「少なくとも、理想だけじゃ守れない。」


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 「そんな鈍足で何が出来るというのだ?」


 奴が衝撃波を出してくるが、強い踏み込みで耐える。


 もっと奴に近づいて精一杯を叩きこむ。邪神すらも殺す閃撃を…。


 「【閃本桜】」


 「くっ……」


 邪神が俺がしたいことを察知したのかガードをしようとする。


 まずは防御を崩す。


 右左下上、四方向からの一閃


 ようやくデルフィニウムの防御が崩れる。


 「あああああああああああ!」


 俺はその隙を逃すまいと一撃一撃に力を込めて剣を振り下ろす。


 「がはっ……人間がこの私にいい!」


 一閃、一閃とデルフィニウムに刻まれる剣撃が増えていき、それに焦ったのか奴は俺に反撃しようとする。


 それすらも俺は認めない。


 絶対に殺してやる。


 「ぐ……下種、ごときがこの私に、傷をつけること、など…。」


 不思議とこいつから血が出ない。


 殺している感覚が無い。


 でも、関係ない。


 これで終わりだ!


 「………………」


 俺が閃本桜を終わらせるとデルフィニウムは静かに倒れ伏せた。


 終わったのか?


 「克己!まだだ!」


 マモン?どうした…。


 終わっただろ…。


 「やれやれ、死なないとはいえ攻撃を受けすぎてしまったな。」


 な、んだと…。


 「克己、避けろ!」


 マモンの必死の言葉に俺もギリギリで反応する。


 俺のいた場所が消えたのだ。


 跡形もなく。


 「そういや、マモンの目は予見眼だったか…。」


 それより、何故こいつは死ななかった…。


 「お前達は知らないだろうから教えてやろう!


 私たち神は不老不死を体現した人間だ!もう我々財団は、人間などという下種ではない!


 我々は愚かな人間どもと違うのだ!我々は神になるにふさわしい存在なのだ!」


 そう、だった…。


 オーディンが言っていた。邪神は不老不死に到達した生物だと。


 なら、死ぬわけねえな。


 「下種ごときが神である私に楯突いたのだ。もちろん死んでもらうぞ。」


 そう言うと、奴は俺に突貫してくる。


 速いっ!


 「ごはっ……。」


 デルフィニウムの攻撃があまりにも速すぎて、まともに防御出来ずに食らってしまった。


 急所は避けたけど、意味ないくらいにダメージが入ったな。


 「さあ、神罰を受け、死すがいい!」


 「く、そ……」


 ここで死ぬのか…。


 やっと幸せになれそうだったのに…。華怜の笑顔をまた見れそうだったのに…。


 二度とないチャンスなのに?手放すのか?













―――――――死にたくない。


 突如、俺の体が発光し始めた。

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