第49話 ケイス王
カツミがもう一度牛鬼に向って行った後、ハルドはライフルの銃口を
「ルナ、頼めるかい。」
「うん、いつでもいいわよ。」
狙うは牛鬼の両目だ。このライフルは
だけど、僕は絶対に外さない。
僕のスキルとルナのスキルが合わされば絶対に外さない。
僕のスキルの一つは、弓兵が持つと言われている【狙撃】の上位スキル【超狙撃能力】だ。
これで、本来では考えられないような距離も狙撃の精度が上がる。
それに加えてルナの【範囲式状態付与】によって、僕の狙撃はカル〇ス・ハス〇ック顔負けの精度に変貌する。
僕の記憶が間違っていないのなら、克己君とシルさんは僕が不幸にしてしまった人の一人だと思う。
僕は昔、罪を犯してしまった。僕の意志通りに体が動いてくれなかったなんてただの言い訳だ。
僕は罪を犯した。己の隠れた欲に負けて。
でも、その贖罪はできない。なら、二人の役に立てる様に、二人の幸せを壊さないために。
僕はこの狙撃を絶対に外せない。
いや……
意地でも外してなるものか。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「学生たちに討伐を任せただと!?どういう神経をしている!」
私の名はカエデだ。
一応、攪乱兵隊の隊長だ。
今、私は国の騎士団の団長に叱責を浴びていた。
確かに、普通なら学生だけを討伐に放り込むのは狂気だ。
ましてや、牛鬼と対峙しているのはたった一人だけだ。
こんなのは正気の沙汰じゃない。そんなこと私にもわかる。
「自分たちが死ぬのが嫌だからと、学生を死地に向かわせるのか。恥を知れ!」
自分たちが死にたくないからと私たちを生贄にしようとした奴が何を言っているんだ。
なぜこうも私たち攪乱兵たちはこんなにも卑下されるのだろうか。
私たちが敵の注意を引くから彼らは討伐対象に狙われることもなく攻撃が出来るのに。
そう私が話を聞き流していると、予想もしない人物が現れた。
「これはなんの騒ぎだ?」
「へ、陛下!?なんで此処に…。」
「私はこの中央公国の王だぞ。国の一大事に私が出向かないことの方が不自然だ。」
「お、おっしゃる通りで…。」
ケイス王。
騎士団長ではないがなぜここに?
「それより、この騒ぎはなんだ?」
そうか、この騒ぎを見かけて来たのか…。
「実はですね――――」
騎士団長がそう話を切り出し、事の顛末を伝える。
今、戦場にいるのは学生で、そのうえ牛鬼とまともに戦っているのはカツミ殿たった一人ということを。
「カエデ隊長、それは本当か?」
「はい、事実です。しかし、私たち攪乱兵は怖気づいたのではありません。」
「それは疑っていない。どの兵よりも率先して敵の注意を集める者達がこの大一番で怖気づくような者達ではないことは分かっている。
なら、なぜ討伐を学生のみに任せた?」
「本人が行くと言ったからです。私たちの窮地を脱してくれるかもしれないと考え、任せました。」
「それは騎士団に頼るよりもか?」
「はい…。今の騎士団は、頼るにはあまりにも信用が出来ません。」
「なんだと!貴様、騎士団に向かってなんて口を!」
騎士団長が何か言っているが気にしない。
「私は彼を信じます。この状況をどうにかしてくれることを。怖気づくことなく私を助けてくれた彼を。」
「そうか…。なら一つ教えてくれ。」
「はい。」
「君の言う彼とは誰だ?」
私は一瞬名前を言うのをためらってしまう。
なぜなら彼は命令に背き、勝手な行動をしている子供という認識をされている。この後どんな罰が下されるかと思うと。
でも、陛下のことだ。真実を見据えて話を聞いてくれるかもしれない。
そう思うと自然と言葉が出た。
「カツミ=クレシマ殿です。」
陛下は一瞬驚いた表情になるが、すぐにおもちゃを見つけた子供の様に笑顔になる。
陛下はこんな顔もするのか…。
「そうか。カツミか…。
全員に命令する。この討伐、今の討伐隊が全滅するまで手出しをするなよ。」
「「「「なっ!?」」」」
この場にいる全員が驚いた。
もちろん私もだ。
さらに陛下は誰も予想だにしなかった言葉を言い放った。
「思いっきりやれカツミ!君の力を信じているぞ!」
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