第47話 それぞれの

 僕の名前はハルド。


 今、ルナに頼まれて克己君の援護をしている。


 ただ、その隣で…


 「【マルチヘルフレイム】!」


 「「「「ぎゃああああああ!」」」」


 「やっぱりこうした方がカツミは喜んでくれると思うの!」


 「ちょっ、エレナさん!?」


 魔術の妨害が思ったより大変だと言い、教会の魔術師団に向かってエレナさんが魔術を打ち始めたんだ。


 ルナも作戦だからスキルは止めていないけどドン引きしてるみたいだ。


 誰かこの地獄絵図を止めてくれ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「開門!」


 俺は作戦開始とともに獄門術を発動する。


 「第四獄門、『天より出でて、大地を割く。星を貫いて、敵を討つ』隕石雨メテオレイン!」


 スキル発動の瞬間に空が曇る。


 そして、その雲を割くようにして隕石メテオが大量に飛来し、寸分たがわず牛鬼を貫いた。


 俺に課された代償は…


 「痛った…。まさか足が吹っ飛ぶとは思わなかった…。」


 代償は足だったらしく、俺の右足の膝から下が無くなってしまっていた。


 これではシルの下に行けない。


 「まずい…。ここは這ってでも…。」


 「その必要はないですわ!」


 俺が這ってでもシルの下に向かおうとすると、ウェンディの声が聞こえてくる。


 シルを連れてきてくれたみたいだ。


 「克己、大丈夫?」


 「大丈夫、痛いけどそんなにじゃない。」


 「その傷がそんなに痛くないって…。取り敢えずじっとして。」


 そう言うとシルは俺に再生術を施す。


 俺の右足が完全に再生したのを確認してからシルは言う。


 「生きて帰ってきてね。」


 「おう。その時は笑って迎えてくれよ。」


 そう言って、俺は牛鬼に向かおうとするがウェンディに呼び止められる。


 「カツミ!」


 「ん?なんだ、連れていかないぞ。」


 「違いますわ。死なないように頼みますわ。シルのために。」


 「おうよ!

 ウェンディはシルのこと頼むぞ!」


 「分かりましたわ!私が責任をもって守りますわ!」


 俺はシルのことをウェンディに託して、その場を去った。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「隊長、納得できません。何故一般の学生だけで討伐に向かわせたんですか?」


 攪乱兵の兵員たちがそう質問するが、カエデは何も言わない。


 ただ、ここで待機して戦いを見ていろと言うだけだ。


 「隊長、何か言ってください!」


 流石に、答えなさすぎなかったのか兵員達も不満が爆発する。


 「隊長、俺は行くべきだと思います。このままだと我々がただの一般人より弱いと言っているものではないですか!」


 ここで初めてカエデが待機以外の言葉を発した。


 「それでいいではないか。我々が弱いのは知っていることだろう?一般人よりも弱いと思われるのが嫌だから死戦に出向くのか?

 私はカツミ殿の言葉を信じた。ここは、彼らに任せるべきだ。」


 「隊長…。」


 隊長がそこまで言うのならとその場は収まる。


 この場に功績を挙げて上にのし上がろうと考える野心家もといアホがいないのが功を奏した。


 (カツミ殿、勝ってそして生きて帰ってきてくれ…。)

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