第46話 作戦

 「エレナ行けそうか?」


 俺はカエデ隊長に借りた通信具でエレナに話しかける。


 「うん。それにしても凄いね、ルナさんのスキルは。全身から魔力が溢れ出てくるようだよ。」


 「その分なら行けそうだな。出来るだけ魔術を妨害してくれ。こっちも死ぬ気で頑張るからさ。」


 そう言うと俺は通信を切る。


 「カツミ、私はどうしてればいいんですの?」


 「ウェンディはシルを守っててくれ。スキル発動後の影響の回復をしてもらうから。」


 「分かりましたわ。」


 俺は目を閉じて周りの人の気配を探る。


 俺は、決闘の騒ぎ辺りから目を閉じると感覚が研ぎ澄まされるのに気付いたのだ。


 最近、それの精度も心なしか高いように思える。


 「エレナとルナとハルド、ウェンディとシル、カエデ隊長と攪乱兵の一行。

 全員、想定の配置への移動を確認。」


 こんな配置を気にして何をするって?


 決まってんだろ。倒すんだよ。牛鬼を。


 「気張っていくぜ!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「牛鬼を倒す!?何を言ってるんだよ君は!?」


 作戦を説明したら、何故か来ていたハルドに反対される。


 どうしているんだよ?


 「だから牛鬼を倒すって言ってんだろ。でも実質戦うのは俺だけだから無理だと思ったら逃げろ。」


 「まあまあ、二人とも落ち着てよ。ハルドも取り敢えず話は分かった?」


 「分かったけど…。この作戦はあんまりよくないと思う。」


 「どこが?」


 「牛鬼に対して使う戦力が一人。そして何よりも封印魔術の停止。

 一つ目も大問題だけど、二つ目は教会をすなわち国を敵に回すようなものだよ。」


 「別に良くね?結果で黙らせれば。」


 「そんなこと言ったって…。」


 「この世界の人間はとことん馬鹿なんだからすぐに手のひら返すよ。断言する。」


 「ええ…。」


 俺の断言にハルドが困惑しているようだ。


 ちなみに俺とハルドが普通に話せてるのはルナが話をつけてくれたからだ。


 それでも遠慮は少し感じるけど…。


 「ていうかさ、なんでハルドがいるの?」


 「え!?その言い方は酷くないか?」


 ハルドの抗議は無視!


 来た理由はルナが説明してくれた。


 「ハルドは超遠距離から攻撃が可能なの。だから、助けになるかもって。」


 ハルドの武器はライフル。しかも、スナイパーライフルときた。


 「じゃあ、自己判断で援護してくれ。」


 「わ、分かった。」


 俺はもう一度、作戦を確認する。


 「俺が開幕にスキルの四番を使う。三番の代償を見ずに使うため、俺も何が起こるか予想しずらい。だから使用後すぐにシルの下に向かい回復、そこから牛鬼と交戦する。必要があればハルドは援護を。」


 これが、牛鬼の討伐の作戦


 そしてもう一つ。封印魔術の妨害。


 「そして、教会の魔術師団の妨害をエレナに任せる。一人では難しい場合、ルナのスキルで力を補填してくれ。」


 ルナのスキルは回復術ともう一つある。


 『範囲式状態付与』


 それが彼女のもう一つのスキル。


 範囲は広範囲から局所まで自由に設定でき、効果は能力強化やスキル強化などのバフ系と能力弱化や麻痺、毒状態付与などのデバフ系と色々ある。


 効果の強さは設定した範囲に依存する。


 広ければ広いほど効果は薄く、狭ければ狭いほど効果は強くなる。


 範囲内にいるものに対して無差別に作用し、自身には影響しない。


 彼女の効果はエレナと相性がいいのだ。


 本来、大人数で行う魔術に一人じゃ対抗できないが、ルナのスキルとエレナの大魔導士によってそれが可能となる。


 「皆には苦労を掛けるけど、よろしく!これが終わったら祝杯を上げよう!」


 「「「「おー!」」」」


 俺たちの作戦会議が終わったところで、俺はカエデ隊長の下に来る。


 「カエデ隊長には攪乱兵の足止めをお願いします。

 絶対に勝ってくるんで!」


 「ああ、分かった。君の頼み事、しっかりと承った。絶対に生きて帰ってきてくれ。」


 その言葉を聞いて、俺は戦場に向かって走り出した。

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