第39話 決着後2
アルザミア学園 修剣場
マモンとの決闘騒ぎから数日。
俺はウェンディとの約束である、剣の修練の相手になる。というのを果たすために修練場で試合をしていた。
もちろん、木剣である。俺のはどちらかというと木刀だけど。
「はあ…、はあ…。」
ウェンディはもう満身創痍だ。
やはり、彼女は男ほどの剛腕があるわけじゃない。そうなると、馬鹿正直に俺の剣を受けるだけじゃ、体力が底を尽きてやられてしまう。
これだけはどうしようもない。今から、筋トレとか言うわけにもいかないし。
しかし、どうにもウェンディは考え事をして力が入っていないようにも見える。
「あなた…、半年でその強さまで至ったらしいですわね。」
「そうだけど?」
「龍人を倒していたそうですわね。」
「誰にその話を聞いたんだ?」
いや、あれを知ってるのはシルラルク邸の人だけだ。おそらく、エレナか。
「エレナですわ。あなた、何者なんですの?」
「俺?呉島克己だよ。」
「そうじゃありませんわ!あなた、本当に人間ですの?」
急に何を言うんだ?
「なんだよ急に…。俺が人間じゃないって思う場所がどこに?」
「ただの素人がたった半年で龍人を倒せるようになるわけがありませんわ。」
「でも、現に俺はな…。」
「近衛騎士レベルでも、十数人の部隊でようやく倒せる相手ですのよ。そんなのを、一人で倒せるわけがありませんわ。」
確かに…。
俺は特に何も思ってなかった。俺がここまで成長していることに。まだ強くならなければいけないと思ってたから。
でも、違った。本来、こんな速度で成長するのはおかしい。確かに、修業期間半年は短すぎる。
なんで、俺はそんなことにも気づかなかったんだ?
「やっぱり、あなたと私は違うんですのよ…。」
そう言うウェンディは弱弱しかった。
彼女は焦ってるんだ。俺が、半年という短期間でこれだけ強くなったことに。言葉を一つでも間違えたら今までのような関係にはなれないかもしれない。
「大丈夫だよ、ウェンディも才能があるんだからさ。」
「私にはあなたのような才能はありませんのよ!」
はい、間違えたー。もう、ヤだよ…。
ふっ、妻が二人出来たくらいで調子に乗った俺が悪いんだよ。俺は昔から、人の感情がはっきりと読めない。
そんなんだから、華怜を泣かせることになったのに。
俺は、どうすればいい?俺は…、
「なら、俺がお前に剣を教えてやる。」
「え?」
「お前がどんな流派を習っていたか知らないが、ウェンディさえよければ俺の流派の染式流を教えてやる。」
「染式流を?」
「ああ、自分の強さに、才能に自信が持てないなら、俺が卒業までの二年と半年の間、勉強と剣を叩きこんでやるよ。」
ウェンディは驚いて目を見開いている。
しかし、彼女の目はすぐに何かにすがるような者の目に変わる。
「お願いします。私に剣を教えてください。」
こうして俺に、弟子が出来たのであった。
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