第38話 決着後1

 「マモン気絶!よって勝者、カツミ!」


 「…。」


 さっきまでペースを乱されて、呼吸が乱れていた俺だが、今では完全に整っていた。


 俺の目の前には、気絶して倒れているマモンがいる。


 こいつを見ていると、あまり目やスキルに頼らずに戦わなければいけないと思い知らせるような気分になる。


 俺がこいつの目とその発動条件について理解してから、形勢は一瞬でひっくり返り、そこから瞬殺で終わった。


 これが俺だったら、これが本当の戦争だったら…。そう思うと、もっと強くならないといけないと思う。


 俺の二人の妻、シルとエレナを守るために。そして何より、失わないために。


 「う…。」


 そんなことを考えていると、マモンが目を覚ます。


 「目が覚めたか…。」


 「貴様、また不正をしたな!」


 「またそれか…。」


 証拠もないのに、何故こんなにも疑いをかけるのか。


 「不正でもしない限り俺が負ける事なんかあり得ないんだよ!」


 「具体的にどういうのが不正行為なんだ?」


 「それは…。」


 「お前言ったよな。殺す以外なら何でもありだって。もし、俺が何かしてても、それは不正にならないぞ。」


 「何を言っている。俺が反則と言ったら、反則だ。おい、審判、この勝負、こいつの反則負けだ。」


 「え!?えっと…。」


 あまりにも無茶な要求に審判は困惑している。


 「決闘の裁定は、審判に委ねられているはずだ。お前の立場がどうであれ、お前は負けたんだよ。」


 「な!?貴様!誰に向かって口をきいていると!」


 「それより、決闘の勝ったから要求を言わせてもらうぞ。」


 「は?」


 マモンは記憶にないといった表情をする。


 「待て、腐れ平民。確かに俺はお前に好きにしろと言ったが、要求をしていいなんて言ってないぞ。」


 「そうだろうな。でも、条件に要求をしてはいけないなんて言われてないからな。」


 ただの屁理屈だ。でも、これぐらいしないと気が済まない。


 「は!?ふざけるな!誰がそんな屁理屈を聞くと思ってる。」


 「私が聞きましょう。」


 その一言と共に割って入って来たのは学長だった。


 「カツミ君、私に出来る範囲の要求だったら、私がかなえよう。」


 それも良いな。俺が行ったことをあいつが守れるとは思えない。でも、学校側から言われたら、違うかもしれないな。


 「なら、そうしましょう。」


 「貴様!ふざけるなと言って…、」


 「三週間謹慎、今後、俺を入れた、シル、エレナ、ウェンディの四人に近づかないこと、話しかけないこと。」


 「それで、いいのか?謹慎期間はもっと伸ばせるが?」


 「いや、いいですよ。ただでさえ頭が悪いのに、これ以上、勉強させてあげなかったら、可哀そうな人になるでしょう?これでも、かなり慈悲をかけてますよ?」


 そう言って、俺はマモンに侮蔑の視線をよこす。


 「そうか、ならそれでいいか。おい、マモン君を連れていき、謹慎処分に処せ。」


 学長の言葉で、マモンは取り押さえられ、どこかに連れていかれる。


 その間も、俺に恨み嫉みの言葉を投げてきたが、気にしないのが一番である。


 「学長、ありがとうございました。」


 「うむ、別に大したことはしていない。これからも何か困ったことがあったら、相談すると良い。」


 学長は俺の好感度を跳ね上げたようだった。 

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