第35話 決闘

 「決闘だ!貴様の悪事は俺が暴く。」


 「は、決闘?」


 何を言っているんだこいつは?


 「ああそうだ。お前が負けたらカンニングを認めて、この学園から立ち去れ!」


 「俺が勝ったら?」


 「好きにすればいいさ。」


 ふざけんなよ。勝利特典が釣り合ってなさすぎだろ。


 「いい加減にしてくださいまし!」


 「あ?」


 「黙って聞いていれば、あなたなんなんですの!あなたが要求するのは退学のくせに、こちらは好きにしろとは、不公平にもほどがあるでしょう!」


 最近、あまり見なくて忘れてたが、ウェンディって怒ると周りが見えなくなるみたいだな。


 こんなにも友人が立ち向かってくれてるんだ。


 「売られた喧嘩は買ってやる。ついでにお前たちの敗北も添えてな。」


 「え?」


 俺はウェンディの方をポンと手をやる。


 「ありがとな、ウェンディ。俺の代わりに熱くなってもらって。」


 「それは…その、あんな横暴が許せなくて…。」


 ウェンディは顔を真っ赤にして俯いてしまう。


 「そうか、あのカツミも腑抜けだったというわけか。ハハハハハ!」


 マモンは勝ち誇ったかのように高笑いをする。


 「俺が勝ったら”好きにさせて”もらうぞ。」


 「という事は?」


 「その話乗ってやるよ。」


 「ならば、決闘は今から一時間後。学園備え付けの決闘場で勝負だ。

 ルールは殺す以外なら何でもありだ。」


 なんだその生ぬるいルールは…。


 決闘とかほざくんだったら命位賭けて見せろよ。


――――――――――――――


 一時間後


 「カツミ、大丈夫?」


 エレナが心配そうに俺の顔を覗き込む。


 「大丈夫だよ。」


 「違うよ。負けたりしないよね?負けても置いていかないでよ。」


 そう懇願するようにエレナは言う。


 「大丈夫だよ。負けないし、俺はエレナを一人にはしない。」


 「カツミ…。」


 エレナが俺に熱い抱擁ハグを求めている。


 俺が抱き寄せてやると、エレナは幸せそうに俺の胸に顔を埋める。


 しかし、そんな甘い空気をぶち壊す奴が現れる。マモンだ。


 「別れの挨拶は済んだか?安心しろ、そいつが学園からいなくなっても俺がお前を一人にしない。

 お前は体と顔は良いからな。毎日慰めてやるよ。」


 なんだこいつ?格好いいと思ってんのか?


 「おい、あんまり粋がるなよ。人の大事な人に手を出すって言うんだったら、こちらも容赦しない。」


 「ははは。面白いことを言うもんだ。お前が勝つなんて絶対にありえないけどな!」


 そう言って、マモンは去っていった。


 「カツミ…。」


 「エレナ大丈夫だ。絶対に負けない。あんな奴に負けるくらいなら、俺は龍人とやりあった時に死んでるよ。」


 「そうだよね。うん!頑張って!」


 「ああ、気張ってくるわ!」


 そう言って、俺は決闘会場に向かおうとする。


 「カツミ!」


 「なん…んむっ…。」


 俺はエレナに呼ばれて振り向くと、飛び込むようにキスをされた。


 十秒ほど口づけしたのち、エレナは俺から一歩離れてこう言った。


 「行ってらっしゃい!」


 俺は一瞬呆然としたが、すぐに気を取り直す。


 「行ってきます!」


 俺は会場に走り出した。


――――――――――――――


 「では、両者合意のもと決闘を開始する。」


 俺は極限まで集中する。いざとなったら目を使おう。


 「お前みたいな平民が俺に勝てるわけがないだろう。せいぜい後悔するんだな。」


 「なんで勝つ前提なの?どこから来るの、その自信?」


 本当になんなんだこいつ?


 「当たり前だろう。俺が勝つのが必然なんだから。」


 負けた時の面が楽しみでしょうがないよ。


 「それでは、始めっ!」


 両者ともに開始の合図では動かない。


 俺は今のうちに相手の状態について把握する。


 装備は一振りの剣のみ。しかも、かなりの装飾があり、耐久力はお世辞にも高いとは言えない物だ。


 服は制服。これは、俺と同じ。


 他には特に武器らしきものは無い。


 というか、相手が仕掛けてこない。これでは、相手の戦い方がつかめない。


 「なら」


 俺から行く。


 俺はエリシュトラを抜刀して、マモンに斬りかかる。


 「かかったな。」


 マモンはにやりと笑うと、俺の剣を受け止めて流し、俺の腹部に刃を通そうとした。


 「まずいっ…。」


 俺は急いで体を旋回させて、奴の剣を弾く。


 大きく飛びのいて、一旦冷静になる。


 奴の戦い方は最初から見ていたんだ。動かないんじゃなくて、それが流派の動きだから。


 「まさかお前、透式流か?」


 「ご名答、そしてお前は俺の目と剣からは逃げられない。」


 そう言うと、マモンの右目が妖しく光った。

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