第31話 語り継がれる話
「君は転生者じゃないか?」
俺はそう聞かれた時、かなり驚いた。
「い、嫌だなあ。転生者なんて冗談も大概にしてくださいよ。」
俺、ここで処刑される?いやだなあ。
ま、最悪、全部叩き斬って逃げるんだけど。
「隠す必要はない。君もこの世界で生きている以上、転生者への認識はしているだろうが、本当のことを言ってくれないだろうか。」
俺は王のことをしんじてみようと思う。簡単に信じすぎではないか?とは思うが、この王が何か歴史と違う事を知っているのかもしれない。
「はい、俺は転生者です。どうします?処刑しますか?」
「いや、そんなことはしない。その代わりに聞いてくれないか?」
「何をですか?」
「無論、何故転生者が悪として扱われているのかを、だ。」
王族が語るんだ、俺の知らない何かがあるんだろう。
「まず、私が何故君が転生者だと気付いたのか教えよう。」
「俺があまりにも無礼だったからじゃないんですか?」
「まあ、それも関係している。」
違うのか?じゃあ何が決め手だったんだ?
「私のスキルの一つに『王』というものがある。このスキルは周りへの威圧に近いものだ。
このスキルの前には、どんな人間もかしこまってしまい、さらに、逆らうことが出来なくなるというスキルだ。
しかし、過去に一人だけこのスキルが効かない者がいた。それが…」
「転生者だったってことか?」
「何故君たちは私のセリフを奪うんだ?」
王が俺のことをジト目で見てくる。
「まあいい。これから話すことは王族の中でしか、語ることが許されていない話だ。他言無用で頼む。」
王は神妙な面持ちで俺に語り掛ける。
「もちろん、約束は守ります。」
「ありがとう。
それは何百年も昔のことだった―――――」
王は話した。転生者が何故悪と言われているのかを。
何百年も前
人間と魔人の戦争が一時的に収束し、国が経済という大きな問題に直面していた時、ある少年が現れた。
その少年は転生者と名乗り、国の財政を立て直し、国を豊かにした。
国民はその少年を尊敬し、称えた。
しかし、教会はそれをよく思わなかった。
教会の信徒たちは、あらぬ噂を流し、国民を不安に陥れた。
そんなときに国に必要だったのは、明確な【敵】だった。
そして、その敵に転生者はかって出た。
その時の王は止めることが出来なかった。なぜなら、それしか方法が無かったから。
それから、少年は国家を揺るがした大罪人として処刑され、その恋人も処刑された。
その後、知識を失った国は、衰退し、五つに割れ、今に至る。
「これが、私たち王族に語り継がれる話だ。そして、少年の死しか方法を見出せなかったことは、私たち王族が一生背負っていく業だ。」
あまり、いい話じゃなかった。処刑されるとき少年は何を考えていたんだろうか。
「そして、そこに君という転生者が現れた。だから、君に謝りたい。
すまない、生きづらい世の中にしてしまって…。」
「頭を上げてください。別に俺が謝られることじゃありません。
それに、別に生きづらいとも思ってませんよ。」
「ありがとう。君がなんの目的でこの世界に来たのかは聞かないでおこう。
しかし、害をなすというのなら容赦はしないぞ。」
「合点招致。これからもよろしく。」
「ああ、よろしく。」
俺たちは握手をし、応接室での会話が終わった。
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