第27話 最後のクラス

 俺たちは管理係の賊を気絶させた後、次々と賊たちを制圧していき、残る賊は、最後のクラスにいる、三人となった。


 「ラストは1-7か。

 また、同学年に怯えられるのかな?」


 俺は、俺のいたクラスである、1-2を除いたクラスで、賊を俺が制圧すると、もれなく生徒たちに怯えられた。


 「克己、最後のクラスだよ。最後まで油断しないで行こうよ。」


 シルはそう言うが、正直拍子抜けだ。


 賊があまりにも弱い。


 「そうは言うけどなあ。

 正直そんな苦戦するほどの相手なんていなかったろ。」


 そんな意見にシルは、ふるふると首を振る。


 「生徒会室にいた人は騎士団をも殺した奴がいるって言ってた。

 克己は見たこと無いから知らないだろうけど王国の騎士団って、精鋭の集まりなんだよ。」


 「でも、もしかしたら、スキルが特殊で、俺が発動前に無力化した、って可能性もあるだろ。」


 「それは、あるだろうけど、警戒はしておいた方が良いと思う。」


 シルは、強く俺に言ってくる。


 そこまで言うなら、警戒はしておくか。


 ガラガラガラ。

 俺から見て、手前に賊、奥の方に生徒とその担任か。


 ん?二人、倒れてる?


 そう思った時、三人組で一番ガタイの良い奴と、目が合う。


 「あ?」


 「えーっと、投降するなら、今のうちに…」


 「誰だ、てめえ!ぶっ殺すぞ!」


 ですよね。

 これまでも同じようなやり取り見たわ。


 でも、今回は違った。


 「あなた達、早く逃げなさい!

 そいつは、不思議な武器で、既に二人の職員が死んでいます!」


 おそらく1-7の担任であろう女性が、鬼気迫る表情で叫んできた。


 「今更おせえよ!こいつで、死んじまえ!」


 賊は取り出した武器はこの世界じゃ、絶対にありえない武器。


 ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!


 俺は、シルを抱えて照準が、他の生徒に向かないように、縦横無尽に駆け回る。


 でかい分、小回りが利かず、俺に“弾”が当たることは、なかった。


 だが、俺の額に冷や汗が流れる。


 「ねえ、克己あれって。」


 やっぱりシルも知ってるか。


 俺たちはあの武器を知っている。だが、この世界では絶対にありえちゃいけない物。


 「これは、掘り出し物が集まる市場で、たまたま見つけた物だ。

 これの名前も分からねえし、値は張ったが、いい武器だぜこれ!」


 ゲームでもあまり遭遇したくない武器。


 「蜂の巣になりやがれー!」


 賊は、その武器の口をこちらに向け、構える。


 その武器は――――――――











――――――――― 速射砲ミニガン







 俺はシルを再度、抱き上げて、逃げ回ろうと考えるが、それよりも早く、賊がスキルを発動させてしまった。


 「そうやって、逃げるやつは死ぬほどいたよ。だが、誰一人殺し損ねたことはないぜエ!

 迫りくる、恐怖に怯えるがいい!【重加速】!」


 ドンっと、空間に衝撃が走る。と同時に俺は身動きが取れなくなる。


 迫りくる、弾丸も止まってるようだ。


 いや、違う!


 俺はここで自分に起きた異変に気が付いた。


 止まってるんじゃない。遅くなってるんだ。


 その証拠に、俺が思考できている。そして、僅かだが、弾丸はこちらに迫っている。


 「俺のスキルは、万物の速度を極限まで遅くするものだ。

 このスキルが、適用されないのは、俺が触れているものだけだ!」


 賊が冥土の土産とばかりに、俺にスキルの詳細を教えてくる。


 この速度の弾で死ぬとは思えないが、奴の口ぶりから、当たったら死ぬ。


 ここで死にたくない。


 この世界に来て、龍人とか、苦しいこともあった。

 でも、華怜シルと再会できて、エレナとも出会えて、二人と一緒にいれて俺は今、前の世界より、幸せに生きてる。


 そんな日常を壊したくない。なら、どうするか。


 もう、転生者と疑われる覚悟で、出し惜しみはしない!


 俺はを手放す。

 幸い、低い姿勢から抱えようとしていたので、そんなに高い位置からは落ちないだろう。


 「華怜、行ってくる。」


 最初、いきなり自分の事を手放したことにシルは驚いていたが、俺の顔を見て、シルは、俺のことを蕩けた様な表情で返答する。


 「行ってらっしゃい。克己。」


 俺は目を閉じ、開く。


 動ける。前ほど早く動けるわけじゃないが、この空間でも、なんら、制限もなく動ける。


 「ああああああああああ!」


 俺は絶叫しながら、走り出し、弾丸をすべて斬り落とす。


 今の剣ならスピードに耐えられる。


 「さあ、ひとっ走り付き合えよ。」


 俺の髪は紅く、目は猫のように変化していた。






【重加速】

空間内の相対速度を大幅に下げ、ある意味、赤猫眼と逆の作用をもたらすスキル。

ちなみに、この世界にシフ〇カーは存在しない

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