学園編
第20話 入学試験
「試験始めっ!」
試験官の合図とともに生徒たちのペンが走り始める。
各々が設問の答えを出すのに四苦八苦して、うなっていた。
俺はというと問題の難易度に青筋を浮かべていた。
そんなに難しいわけじゃない。でも、これは、
大問3(1)
次の式を答えなさい。
6+8-3×4
「馬鹿にしてんのかああああああああああ!」
―――――――――――――――
「特待生枠で入試免除?」
俺がエリシュトラを手にしてから二か月ほど経ったある日、俺とシルとエレナは入学前の試験を受けるために央都にやってきた。
王都ではない。
この国は、というよりも人間界側の世界は大小の村や町のほかに、四大公国都市と中央公国によって構成されている。
国ごとに王がいるのに王国ではないという。なんともややこしいことだ。
その中でも俺たちは通う生徒の大半が貴族たちというアルザミア学園に入ることにした。
選んだ理由は二人がシルとエレナがここを強く望んだからだ。
曰く、制服がいいらしい。
だから、入学試験の手続きをするために受付に来て、必要だからとスキルを教えた結果が
もちろん俺じゃない。俺はスキルを極力教えないようにしている。
あまりにも異質なスキルの開示は不安がある。
「カツミどうしよう。入試免除だって。受けた方が良いのかな?」
エレナが申し訳なさそうに俺に聞いてくる。というか下手な敬語はやめたのな。
「やったー!克己試験頑張ってね!待ってるから!」
シルは歓喜しながら俺にちょっかいを出してきやがる。奴隷紋発動させるぞ?あ、駄目だ。奴隷紋解除したんだった。
全く関係ないがシルが妻になって少し経ったころに奴隷紋をつけて束縛しなきゃいけない程信用してないわけじゃない。と、言ってシルの紋を消していた。
「良いよな二人ともスキルのおかげで試験免除なんて。」
シルとエレナはスキルのおかげで免除の話が来ていた。
エレナの持つ大魔導士スキルは詠唱の破棄や使用魔力量の減少、適正属性が全属性になる。などの強力なスキル。
シルの持つ再生と蘇生のスキルは単体でも珍しい物なのに二つのスキルを持っていることはかなり凄いことらしい。
スキルの効果説明いるか?そのまんまだよ。
「二人は免除でいいんじゃないかな?俺も入れるようには頑張るからさ。待っててよ。」
俺がそう言うと二人は免除の話を快諾し、入学が決定した。
「ではカツミ様、試験の日まであと二日。悔いの無いようにしてください。」
受付の人が俺にそう伝えると受験番号を渡して奥に消えていった。
「受験か…。」
俺はこの世界での勉強のレベルが分からない。だから俺は必死で勉強した。思い出せるだけの公式を思い出して。
この世界の試験科目はただ一つ数学だけだ。それだけで全てが決まる。
アルザミア学園は央都内で一番のエリート校とされているため、それなりに難しいらしい。
「はあ…。大丈夫かなあ、俺。」
試験当日
「じゃあ頑張ってきてね克己。」
「ああ。頑張ってくるよ。あんまり自信はないけど。」
「カツミ、そういうのは思ってても言っちゃだめだよ。絶対合格するって思わないとできるものもできないよ。」
エレナがそう発破をかけてくる。お前は俺のオカンか。
「そろそろ時間だから行ってくる。絶対合格するから待っててくれ。」
俺はそう言って受験会場に向かった。
―――――――――――――――
試験時間になると答案用紙と問題が配られる。
「試験始めっ!」
試験管の気合が凄い…。
試験官の合図とともに生徒たちのペンが走り始める。
各々が設問の答えを出すのに四苦八苦して、うなっていた。
俺はというと問題の難易度に青筋を浮かべていた。
そんなに難しいわけじゃない。でも、これは、
大問3(1)
次の式を答えなさい。
6+8-3×4
「馬鹿にしてんのかああああああああああ!」
俺の絶叫で一斉に視線が集まる。
「そこ静かにしなさい。失格にしますよ。」
「あ、はい。すいません」
俺は席に座り直しもう一度考える。
これまで普通に解いてきたけどもしかして違うのか?皆指折りで問題を解いてるみたいだ。
いや、この世界は前とは違う。ただの式に見えて違う法則かもしれん。この式は一見すると答えは2になるが、もしかしたら魔法の干渉を受けると4になるとかかもしれん。
騙されるな。よく考えろ。
…。
…………。
………………………………………………………。
全く分からん。
仕方がない。普通にやるか。
俺は何にも考えずにただあの簡単な式たちを解き続けた。
三分後
「(ふう。終わった。)」
それはもう、色々な意味で。
俺は思考を完全に放棄して放心していると試験終了の合図がなり、答案用紙が回収される。
俺は目立たないように早々に立ち去る。
試験会場を出た俺はシル達と合流した。
「試験どうだった?」
エレナがそんな質問をしてきたが、俺は力なく首を横に振る。
「全く自信がないよ。」
そう言うと二人は慌てて、「来年があるよ。」と二人で言ってきた。
やめて、余計に居た堪れないわ!
でも、俺はこの時知らなかった。学園史上最大の天才がいると。
そうなったら良いのにね。
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