第17話 好意
エレナside
「もしかしなくても克己のこと好きだよね?」
そう言われた時私は初めてカツミの奴隷の顔をはっきり見たと思う。
灰色の髪に私が嫉妬するくらいに整った顔立ち、その顔に付いた愛くるしい目。
カツミが気に入ってしまうのもわかるくらいの美少女だった。
「そうだよね。克己ってカッコいいもんね。」
カツミの奴隷は私が黙ったことを肯定ととったのか話を続けている。
でもどうしても気に入らなかった。ぽっと出のくせにカツミのすぐそばにいることだけじゃない。
「なんで笑ってるの?」
「え?」
自分の好きな男に
まるで選ばれなかった私をあざ笑ってるみたい。
「私がカツミを好きで何がいけないの?なんで笑われなきゃいけないの?」
「ち、違うよ。ただ克己のことを好きになってくれる人が私以外にもいたってことが嬉しくてつい。
気を悪くしたんだったらごめんね?」
この女は何言ってるのだろう?
他に惚れている女がいるんだったら寝取られてしまうかもしれないんだぞ。
実際私だってやろうとした。
でもそんな私の考えを読んでいたかのように奴隷は続ける。
「そりゃあ寝取られるかもしれないっていう心配がないわけじゃないよ。でもね克己はそんなことしないって信じてるの。昔っからそうだから。」
「昔から?」
「そう!昔からなんだよ!
克己はね寝取られ系の話を聞くとその人はどんな気持ちでいるんだろうとか考えて、考えすぎちゃって弱っちゃうの。」
誰もそんなこと聞いてない。
そう思った私だがぐっと我慢する。
「そんな克己だから私は信頼してるのそういう人の気持ちになって弱っちゃう克己だから。絶対に裏切らないって。」
そんなことを自慢げに話す彼女は目がハートマークになってる気がする。
でもそんなに昔からか。
「そんなに前から二人は一緒だったの?」
「うん。そうだよ。小さい頃は一緒に過ごしてた。」
その言葉を聞いた時自分の感情が抑えられなくなり目から涙が溢れだした。
「ううっ。ひど…いよ。
好き…に、好きになったのに。
自分の過去にもカツミが隣にいてくれるだけで向き合えると思ったのに…。
こんなのあんまりだよ…。」
初めてカツミと会ってから半年と少しの間最初は好ましく思ってなかった。でも、ずっと頑張ってる姿を少しずつ目で追うようになっていた。
極めつけはあの龍人の襲来の時。カツミは私を守ってくれた。そのことがきっかけで漠然とした思いがはっきりとしたものに変わった。
我ながらチョロいとは思う。でも惚れてしまった。
だけど、最初から私には思いを告げることすら許されてなかった。
そんなの…そんなの…。
「ひどいよ…。」
考えれば考えるほど自分が惨めになってきた。
そんな呟きも考えも関係なく
「エレナさんそこで一つ提案があるの。」
「なに?」
「エレナさんはちゃんとその思い伝えた?」
私は首を横に振った。
「ううん。伝えてない。」
「ならさ、伝えようよ。克己に。」
「え!?」
「大丈夫。私に考えがあるから。」
「え!?」
私はこんなに動揺したことなんて多分今までになかったと思う。
――――――――――――――
克己side
今日はシルと再会して今夜は二人だけの夜を過ごすつもりであった。だが、
「えーと…。なあシル。」
「なーに?克己?」
「なんでエレナがいるんだ?」
俺は顔を真っ赤にしてもじもじしているエレナと向かい合っていた。
「えっと…その…あの…。」
「ほらエレナさん勇気出して。」
「あ…。うん。そうだよね。伝えなきゃわかんないよね。」
「?何が?」
意を決したエレナは俺の目を見て言葉を紡いだ。
「カツミ…。好きです!」
「え゛!?」
俺が驚くとエレナは口をとがらせて怒ったようにする。
「そんなに驚くなんて…。ちょっとショックです。」
「なんか悪い…。」
「いえ、いいんです。私はあなたが好きです。一生懸命で努力を怠らないところとか、朝昼夜に作ったご飯を残さず食べてくれるところとかが大好き。
カツミのことがこんなに大好きになったのは自分より私を助けてくれたことだよ。
でも勘違いしないでほしいのが、私は助けてもらったから好きになったわけじゃないの。この半年の間あなたを見てきたから好きになったの勘違いしないでね。」
こんなにストレートに好意を向けられた経験がないため俺は困惑してしまう。
「お、俺は…。」
戸惑っているとエレナは真剣な目で自分の意図を伝えてきた。
「いいの。カツミにはあの子がいるでしょ。だからあの子を幸せにしてあげて。」
でも俺はどうすればいいんだ?
如何せん前の世界では華怜しか女友達がいなかったからこういう状況に弱いんだ。
「ちょっと待ってエレナさん。」
エレナが言いたいことを言ってスッキリしていたようだがシルは不満らしい。
「エレナさんはそれでいいの?」
「ええ。伝えたいことを伝えたらスッキリしたから。」
「じゃあ克己とこれから会えなくてもいいんだね?」
そうシルが言うとエレナの表情に陰りが生まれた。
「それは…。」
「私はカツミに提案します。」
一人だけ空気感が合わないシルが何か言おうとしてるよ。と二人の意見が一致したのは秘密である。
「私とエレナさん、両方とも妻に迎え入れてはどうでしょう。」
「「は?」」
いやいや何それ?おかしいよ。つーかエレナも驚いてるじゃん。
かなりきょどってる俺にシルは耳打ちしてくる。
「克己。この世界の貴族はね妻を何人娶っても別に問題ないんだよ。実際この世界に私の弟がいるけど腹違いだよ。」
「そういう問題じゃない。その、なんいうか、世間体があんまりよくないんじゃ?」
「二人なんて全然受け入れられるよ。私が知ってる貴族にはもう数えきれないくらいの人数のところもあるから。」
もう何だろうか…。何も考えたくない。
「このままだとエレナさんが可哀そうだよ。エレナさんチョロいもん。悪い男に引っ掛かっって傷ついてたら克己は後悔しない?」
「それは…。」
「私はねエレナさんと少ししか話してないけど、不幸になんてなってほしくない。そう思ったよ。
克己はどうなの?エレナさんの話を聞いて。」
俺は少し考える素振りを見せる。
「不幸になんてなってほしくない。それは当たり前だよ。でもいいのか?二人いるってことはそれだけ向けられる愛情が少なくなるってことだよ。」
「克己ってそういうとこ真面目だから少なくならないように溺愛するでしょ。」
なんの捻りもなくそういうことを言われると恥ずかしい。
俺は頬を赤くさせつつも俺は決心する。
「俺はシルだけじゃなくて今まで支えてくれたエレナも幸せになってほしい。
だから俺はエレナも妻にしようと思う。」
そんなことを突然言うものだからエレナが驚いてる。
「え?え?」
もうエレナが泣きそうだ。
「そういう事なんだけどさ。エレナが嫌じゃなければ俺と結婚してほしい。もちろん二番目の妻ではなく、俺の一人の妻として。」
そう言うとエレナが顔を俯かせながらこっちにやってきた。
「不束者ですがよろしくお願いします。」
そう言って俺に向けてきた笑顔は多分どんな男でも悩殺できたと思う。
そんな時パンッと手を叩いてシルが笑顔で俺に話しかけてきた。
「じゃあ克己始めようか。」
「何を?」
「お楽しみに決まってるじゃん。もちろんエレナさんも一緒に。」
こいつ。とんでもないこと言い始めやがった。
童貞の俺でも知ってるぞ。そういうのって男はめっちゃ疲れるって。
「待て待て。俺の体力が持たないよ。」
「大丈夫だよ。休憩は挟むし何度もしようってわけじゃないから。」
シルはもうダメだ。そう思った俺はエレナに助けを求めようとすると、
「カツミとお楽しみ…。カツミと一つになる…。」
だああああああああ。エレナももうダメだ。
あーもう覚悟を決めろ!
「お手柔らかにお願いします。」
俺がそう懇願すると俺は二人に押し倒された。
――――――――――――――
6時間後
あれからは凄かった。
シルはだい〇ゅ〇ホールドで俺を全く放そうとしなかったし、エレナは結構ノーマルだったがこれがまたこれ以上ない程幸せそうな顔で俺を受け入れてた。
そんなことは置いておき俺とシルはエレナに秘密を話そうとしていた。
「エレナ。これから話すことは全部本当のことだから。」
「はい。どんな秘密でも受け入れる気です。
あなたの妻ですから。」
こんなことを言ってもらえるなんて俺はどんなに幸せなんだろう。
「まあ、私の純潔を奪っておいて妻にできないとかの話だったら許さないよ。」
怖いよ!目が笑ってない。
「そんなことしないって。ていうかあんまり関係ないから。」
「エレナ、こっからはとっても大事な話なの冷静に聞いてね。」
「分かってるよシル。」
ちなみにシルとエレナは名前で呼び合うくらいに打ち解けていた。
二人の関係が良好なのはいいことだ。
おっと、話がずれてしまったな。
「じゃあエレナ聞いてほしい俺とシルの秘密を。」
「うん。」
「俺たち転生者なんだ。」
え?なんで?エレナが安心したように笑顔になったんだけど!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます