第14話 奴隷商
俺が町に行く日の朝
「エルカート家が堕ちたか。」
師匠が新聞(みたいなもの)を見ながら呟いた。
この世界にも新聞みたいなものは存在している、如何せん情報の伝達速度が遅く、こんな辺境の地となると新聞の情報は三か月から半年くらいずれが生じるらしい。
事実エルカート家とやらの話も四か月も前のことらしい。
「じゃあ、師匠時間もあれなので俺はそろそろ行きます。」
「ああ、くれぐれも気を付けて行くんだぞ。
まあ、お前の能力ならそこらのごろつきなら大丈夫だろうがな。」
そんな師匠の言葉を受けながらシルラルク邸の出入り口に来るとエレナがいた。
「気を付けて出かけてくださいね、カツミ。」
「うん。行ってくるね。」
エレナと軽い挨拶を済ませシルラルク邸を後にした。
町までは馬車が通っていて二時間もすればつくらしい。
俺は町がどんなところなのか想像しながら馬車を待っていた。
―――――――――――――――――
二時間とちょっと後
「おえー…。」
「おいおい。兄ちゃん大丈夫か?」
俺は町に来て本を買うどころではなかった。
現代社会で車がいかに快適な乗り物なのか知らされていた。
馬車を待って乗り込む。そこまでは問題なかった。
馬車に乗ってから三十分くらいしてから急な吐き気を催していた。要は乗り物酔いだ。
こんなド田舎の道なんか舗装されていない。もう車内はめちゃくちゃ揺れた。ほんとにやばかった。
他のやつらは平然としていたがこれが当たり前なのか?
「うう…。気持ち悪い…。」
「兄ちゃんちょっとじっとしてな。」
馬車の運転手がそう言うと手の先に光が集まり始めた。それと同時に俺の気分は幾分か楽になっていた。
「運転手さん、ありがとう。大分楽になった。」
俺が礼を言うと運転手は
「良いってことよ。たまに酔うやつはいるからな。
俺たちの業界もみんなある程度の回復魔法が使えるんだぜ。」
いい顔をしてきやがった。いや、いいんだけどさ。
「じゃあ、俺はここで。
一応用事があるんで。」
「そうだな俺も仕事だ。
またいつか会おうぜ。」
そう言って俺は運転手と別れた。
「さてと…、」
本屋はどこかな?
そんな感じで目当ての本屋に行き目当ての本を買った俺は町中をふらふらとしていた。
そこで俺は見つけてしまった。いや普段なら見つけてもこんなに食いつかないだろう。
そう。あの『天啓』さえ無ければ。
「奴隷商…。」
アステリアは言っていた。自分の気に入った性奴隷を買え、と。
俺は半信半疑ながらも奴隷商に足を踏み入れた。
「これはこれはお客様。いらっしゃいませ。
当店では色々な奴隷を扱っております。どちらになさいますか?」
俺は軽く店内を見渡す。
奴隷の種類は三者三様だった。
スタイルがいい者やロリータ体型など。女奴隷だけではなく男もいるようだ。
試しに適当な奴隷の値段を見てみるが、
「た…高い…。」
高かった。具体的に言うならこの世界で四人くらいの家族が一年ぐらい不自由なく食事を得られるくらいの金額だった。
「お客様?どうなされました?」
俺が唖然としていると店員に声を掛けられる。
「さっき色々な奴隷を扱っていると言っていたよな?」
「そうですが?」
「じゃあ、ここより安いのってどこにいるんだ?」
俺は何を聞いているんだ?何故買う前提で話をしているんだ?
そんな考えとは裏腹に俺は店員に別の売り場へと案内される。
「ここにいる奴隷たちがうちの商品の全てです。
奥に行けば行くほど安くなります。」
「そういえば。
奴隷の値段ってどうやって決めるんだ?」
「簡単ですね。いいスタイルを持っている、もしくは万人に対して需要がある体型はもちろん高くなります。
安くなるものとしては病持ちや処女などですね。」
「病持ちって性病とかはどうなるんだ?」
「性病など持ったものは基本売り物になりません。店の信用にかかわりますので。」
「基本ってことは売り物になるときもあるのか?」
「もちろん!類稀なる嗜虐性を持った人たちには性的接触を必要としないのでこちらをお勧めしております。」
こんな話を聞かされているとチクリと胸が痛むが今の俺にはどうすることもできない。
俺が色々思案しながら歩いていると店員が俺を呼び止める。
「お客様、そちらの方はあまりお勧めできません。精神的に問題がある者たち、処女、頑なに性的接触を拒むものなどの欠陥品ばかりです。」
「てことはこちらの方が安いのだろう。一応見せてくれ。」
「しかし…。」
俺の見せてくれという言葉に店員は少し渋るが俺は無理にそっちを見せてもらう。
そのエリアは酷かった。先ほどのエリアまでと違い。こちら側はあまり清掃もされておらず、奴隷たちもすべてを捨てたような死んだ目をしたものばかりだった。
だが俺は見つけてしまった。
「店員。」
「はい。なんでしょうか?」
俺はある奴隷を指さして言った。
「あの奴隷を買う。」
「は?」
「聞こえなかったか?」
「いえ、違います。
しかしその奴隷は処女の上に職員の言うことを聞かず商品にすらできないような者ですよ。」
「構わんいくらだ?」
俺は少し強めの口調で言ってしまう。
「わかりました。銀貨三枚程度です。後で文句を言わないでくださいよ。」
俺は店員の言葉を完全にスルーして俺が買った奴隷に店員に聞こえない声で話しかける。
「久しぶりだな。華怜。」
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