第13話 準備
龍人の襲来からがもうすぐ二週間になる。
割と平和に暮らしてはいたんだが。
「この歴史書の続きが見たい?」
俺は最近シルラルク邸の書斎に閉じこもって歴史書を読んでいて、そこで転生者についての本を発見した。
それには興味深いことが多く書かれていたが続きが書斎から見つからないのだ。
だから俺は師匠にその歴史書の続きがないか聞いたのだが結果はあまり良くなかった。要は無かったのである。
「無いなら金を渡すから町に買いに行くといい。
そうだ、金を余分に渡すから何か好きなものでも買ってこい。お前も娯楽の一つや二つあった方が良いだろう。」
「ありがとうございます。師匠。」
「それはそうとして、いつになったら話してくれるんだ?」
「いえ、それはまだかと。」
余談だがエレナと抱き合っていたところを師匠やシルヴァナに見られていた。まあ、それ自体はそこまでの問題じゃなくそのあと色々な質問をされたのだ。『なんで腕が壊死していたのか』とか『どうやって龍人を倒したのか』など色々な質問をされたが俺は、
『話すのは少し待ってほしい。
師匠たちのことは信頼してるし話しても良いと思ってる。でも俺がどんな扱いを受けるのかが分からない。分からない以上俺も師匠たちも覚悟がいると思うから、それまでは待ってほしい。
あ、勘違いはしないで、この世界で俺は犯罪は犯してないから。』
と言って回答を先延ばしにしていた。
師匠とシルヴァナはあまり納得はしていなかったがエレナが笑顔で『カツミ待ってるからね!』と言ってその場は収束した。
…そういえば初めてエレナが俺の名前読んでくれたな。
「じゃあ、町に行ってもらうか。今回はカツミ一人でいいかな。」
「え?」
エレナが師匠の言葉に驚愕している。
俺が一人で街に行くということに何か不満があるようだった。
「何かおかしなこと言ったか?」
「いえ、そうではなく。カツミを何故一人で行かせるのでしょうか。」
「いや、普通のことだろう。
まあ町の店の配置を知らないとかはあるだろうが地図を見れば一発だ。」
しかし、エレナは納得していないようで。
「でも、こういう時に案内するのが主に仕えるメイドの務めではないのですか?」
「エレナの主は俺なんだけど!?」
師匠が困惑してる。かなり珍しい。
そんなところにシルヴァナが発言する。
「エレナ。あなたのやることはまだ終わっていないでしょう。
そもそも何故そんなにカツミ様に付いていきたいのですか?」
「それは…。その…町に行ったら不埒な人もいるわけで…。」
「カツミ様はそんな輩にやられるほど弱くありません。
それは理由としては不十分だと思いますが。」
シルヴァナが非常に容赦ない反論をするが、エレナは顔を赤くしながら主張する。
「その本当は…、女の人に言い寄られるんじゃないかって…。
カツミかっこいいし…。」
ちょっと最後の方が声が小さくて聞き取れなかったがエレナは大丈夫なのだろうか?
なんか師匠とシルヴァナが生温かい目でこっちを見てる。え?なに?
「エレナそもそもこの屋敷は俺の物じゃない。そんな簡単に女の人を連れてくる人じゃないよ俺。」
俺はひとまずエレナが落ち着くように主張はしておく。
師匠は仕切り直すようにパンっと手をたたいて言った。
「まあひとまず明日はカツミが一人で買い物に行く。それでいいだろう。」
そんなこんなで町に行くことになったのだがアステリアの言葉なんか俺はすっかり忘れていた。
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