第12話 天啓
俺が目を覚ますと、あたり一面が真っ白だった。
( ……。世界が滅んだのだろうか。)
「アハハ!そんなわけないじゃん。」
(誰だ?)
俺の目の前には、女が立っていた。それもエレナやシルヴァナに負けず劣らずの容姿だった。
「私はねー。円卓神の一人の
名前の通り命を、生き物の生を主軸にした概念の女神だよー。」
(アステリアか。
ん?というか円卓神って。)
「んー?君円卓神を知ってるの?」
(知ってるも何も俺はその円卓神にこの世界に送られてきたんだから。)
「えー。でも、この世界はそんな特例を認めなきゃいけないほどの世界じゃないよ。
だから、円卓神による転生はありえないはずなんだけど。」
(いや、でも俺は…。)
「じゃあさ。教えてよ。」
(何を?)
俺はアステリアの言葉に疑問符を浮かべる。
「何ってー。決まってんじゃん。
その円卓神の名前だよ。」
(ああ。そんなことか。なら、簡単に答えられる。)
俺はそう考えるとアステリアに答える。
(オーディンだよ。
すると、アステリアは怪訝な顔をして答える。
「オーディンなんて、そもそも円卓神の席に戦というカテゴリーは存在しないよ。
本当に君は何者?」
そう言うとアステリアは俺の顔を覗き込んでくるが、
「あれー?本当に円卓神の加護を受けてる。
ねーねー。なんで?」
(そんなこと俺が知るかよ。
こっちはオーディンが存在していないってことの方が衝撃なんだけど。)
「えー?でも本当にオーディンなんて奴いないよー。」
(なんだろう。オーディンの話だけで先に進めなくなりそう。話を変えないと。
かなり面倒くさくなってきた。)
「聞こえてるよー。」
(え゛?
まじ?口に出てた?)
「違うよー。ここでは円卓神以外音を発せないんだよー。
私が聞いてたのは心の声だよー。」
(ここではって…。ここ何処?)
「ここは
(うん。それは分かった。
それはそうとして、そろそろ元の場所に戻してくれない?)
「ひっどーい!質問したのそっちなのに。」
(だって、帰りたいんだもん。)
「じゃあさ。こっちからも質問していい?
ほら、質問のしあいっこしよ。」
(別にいいというか、拒否権が無いというか。)
俺はアステリアの提案に渋々応じる。
「この際オーディンのことはどうでもいいよ。後で調べるから。
君はこの世界に何をしに来たの?」
やっぱり聞かれるよね。
そう思いながらも俺はその質問に答える。
この世界で起こると言われていること。
幼馴染にもう一度会いたいこと。
本当の西島の真意が知りたいこと。
邪神を討ち取りたいこと。
全部言い終わってアステリアの顔を見ると、
「うっ、うっぐ。」
泣いてた。
(え?なんで?)
「だって、泣いちゃうよ。幼馴染のためにつらい思いをしてここまで来て、なんて一途な話感動しちゃうよ。」
(そんなに感動することは言ってないんだけどな。案外円卓神も感情豊かなのかな?)
そんなことを考えているとアステリアは急に表情を変えて俺に向き直った。
「そんな一途なあなたに天啓を伝えます。」
天啓?なにそれ?
「今から二週間後あなたは町に行くことになるでしょう。そこであなたは奴隷商で性奴隷を買いなさい。買う奴隷はあなたの好みで。
さすれば報われないあなたに幸せが訪れるでしょう。」
(誰が報われないじゃ。コラ。
あと俺は性奴隷なんて買わないぞ。)
「あなたがそういうものを嫌っているのはこちらも把握済みです。そのうえで言っているのです。
あなた自身の目で見て、あなた自身が抱きたいと思う相手を買いなさい。私から言えることはそれだけです。
拒否するも、しないもあなたの自由です。」
(買うとどうなるんだ?)
「では、これでさようならですね。
次に会うのは近いうち、はたまた死後の世界かもしれません。
あなたの道に幸せが訪れることを祈っています。」
(いや、説明を…。)
「さようならー。」
そう言ってアステリアは俺の質問から逃げるように去っていった(というより消えた)。
(性奴隷って言ったってなあ。)
俺はそういうのは好きじゃない。
もしかしなくても幼馴染があんな目にあったからだろうな。
(まあ、いいや。
とりあえず寝よう。凄く眠い。)
思考を放棄して良い訳がなかったがそれ以上は考えられない。
(眠い…。)
そう言って(←言ってないね)俺は目を閉じた。
―――――――――――――――――
目を覚ますとここ半年間見慣れた天井があった。
「ん…?」
胸の辺りに何かの重さを感じてそっちの方を見ると、
「んう…。カ…ツミ…。」
エレナが俺の胸の上で寝ていた。
(無事だったんだな…。)
そう考え、起きるべくエレナに声をかける。
「エレナ、起きるからちょっとどいてくれ。」
その一声で目を覚ましたエレナは起きた俺を見て目を丸くしたがすぐに抱き着いてきた。
力強く抱いてくるエレナの頭を撫でながら、
「おはよう。」
と言ったらエレナは泣きながら力強く抱きしめてきた。
二人はしばらく抱き合っていた。
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