第7話 嫌疑
「なんで此処に龍人がいるの?」
龍人って確か魔族の中でもかなり上位の存在だぞ。そいつが何故こんなところに?
「ニンゲンコロス。オトコハクウ。オンナハオカス。」
結構片言で聞き取りにくいが俺たちが普段喋っている言葉で話してきている。
だけどそのセリフは聞き流せない。
「女は犯すだと。ふざけるな。」
華怜が自殺した原因が強姦なんだぞ。黙っていられるか。
そんな考えとは裏腹にエレナは怯えた様子でこっちを見て質問してきた。
「あの龍人の言葉が分かるの?」
「ああ。片言だけど。俺たちが普段話している言葉で喋ってるぞ。」
でも、エレナはより一層怯えてしまう。
俺おかしなこと言ったか?
その疑問に答えるかのようにエレナは答える。
「そんなわけない。あの龍人が何か言ったとき変な音しか聞こえなかった。
何より魔族と人間は一部を除いて言語が違いすぎて会話なんかできないんだよ。」
「そうなのか?はっきりじゃないけど言ってることは分かるぞ。」
確かに考えてみれば日本とアメリカみたいに人間と魔族で言語が違うのなんか当たり前だ。
ただ、言葉が分からないよりずっと状況はマシなはず。怯える理由が分からない。
「あなたもあいつらの仲間なんですか。そうなんですね。」
そうエレナは俺に対して疑いの目を向ける。
「違うぞ。俺はあいつなんて知らん。
俺は人間だし、第一、」
この世界の人間じゃない。
そう言おうとするのを踏みとどまる。
半年一緒の屋敷で生活したとはいえ、このことをまだ言えるほどの信頼は築けていない。
「第一なんですか。
そういえばあなたは事情を何も言わずにいましたね。
あなたは何なんですか?何者なんですか?
言えないんですよね。そうやってあなた達龍人は私から大事なものを奪うんですね。」
「違う。何もかも違うんだエレナ。俺は、」
これ以上ありもしない恐怖にエレナが震えるくらいなら自分が転生者であることを言ってしまおう。
そう思った時だった。
「っ……。危ない!」
「え?」
俺はエレナの後ろに来ていた龍人からエレナを突き飛ばす。
そんなことをすれば龍人の攻撃をもろに食らうだろうな。
「がはっ。」
痛え。
次はこんなのじゃ済まない。
だけど今の戦力じゃ勝てない。目をまだ使うわけにはいかない。
「エレナ逃げろ。」
「でも。」
「『でも。』じゃない。
逃げて師匠を呼んで来い。俺じゃこいつに勝てない。このままじゃ二人とも死ぬ。」
「そんなことをしてヨーマ様を呼んできても、あなたが死んでるかもしれないじゃない。」
「それで良いじゃんか。」
「なんで?」
「お前さっき言ったよな。
『そうやってあなた達龍人は私から大事なものを奪うんですね。』って。
なら死んだ方が都合良いだろ。」
「それは。」
クソっ。ここまで言っても行かないか。
「何でもいいから早く行ってくれ。お願いだから足を引っ張らないでくれ。」
「うっ。うわあああああああ」
俺の最後の一言でエレナが泣きそうな顔になり絶叫しながらしながら逃げて行った。
「ニンゲン、ブタイノジャマ。」
そして、龍人の方に向き直り、
「もう気にかけなきゃいけない奴は
思いっきりかかってこい。」
戦線布告してやった。
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